「アリババ神帝は一度、悪の手に染まるはずでした。しかし・・・」
 超聖神ディアナは変わった未来に満足そうに頷くも、少しばかり戸惑いの表情を浮かべた。
 「うむ。まとばを救ってくれた彼らの未来が明るいほうに向くのは素直に喜ばしいことだが、アリババ神帝が悪の手に落ちることにより生まれるものも少なからず存在する。今、まとばを訪れている珍客が生まれる未来かどうかも定かではない。」
 超聖神クロノズーも同様の表情である。
 真白域及び真黒域に居を構える二人の超聖神は、遠い未来を覗く力を持つ。しかし、時限を越えた存在が出たことによって変わってしまった未来をうまく読むことは不可能なようだ。
 「今、まとばを訪れている珍客」ことピア・マルコはロココとマリアの息子に当たる。
 アリババ神帝が悪に手に落ちる起因はワンダーマリアによる所が大きく、純粋な天使のままヘッドロココとともに旅をすることで未来はどう変わるのか。
 「そもそも、聖ズーは神帝たちを元いた世界に戻しただけ。我らの未来が今の神帝たちの未来へ繋がるかどうかも分かりません。」
 ディアナは抜け道のない迷路にはまり込んだような気分になってくるのを感じた。
 「おそらく我ら以上の神となるだろうジェロニクスゲンキが生まれたのも彼らの力あってのこと。我らには無理でもジェロニクスゲンキなら良い未来を作れるだろう。今はそれを願うしかない。」
 クロノズーは未来は未来のものに託すべきで、自分達の出番は終わったのかもしれないと心の中で思うのだった。










 「みなさん、気を引き締めて行きましょう。」
 ヘッドロココの言葉に7神帝とクロスエンジェルは揃って頷いた。


 つい先日、悪球エリアでサタンマリアがワンダーマリアへとパワーアップした。ワンダーマリアの部下達も彼女の魔力アップの影響なのか、こぞって力が増しているように感じる。
 一瞬の隙が命取りになりそうな最近の悪魔軍の攻勢にロココは神帝たちを引き締めなくてはならなかった。
 神帝たちは戦力的には大変心強いものの精神的にはまだ子供の域を出ず、ケンカをしたり、はしゃいだりが日常茶飯事なのだから。





 「あれなんですの?」
 一人、飛びながら移動していたクロスエンジェルが遠くに見えるものに一番先に気が付いた。
 よく、目を凝らしてみてみると大きな扉のようなものが見える。
 「慎重に行きましょう」
 今までにも、新しい地にたどりつくたびに心躍らせてはいたが、悪魔の罠であったことも少なくはなく、走り出しそうになる神帝たちをヘッドロココがたしなめた。
 そこにはとても大きな扉があり、それはシャーマンカーンによると次界門と言うらしい。

 「なんでもいいよ。とにかくあけちまおうぜ。」
 難しいことを少々苦手としているアリババ神帝はヘッドロココの忠告もあまり聞いていないようで先頭で次界門へ近づき、「開けゴマ〜」とちょっぴり間抜けな合言葉をかけている。
 アリババ神帝特有のどんな扉でも開けてしまう理力だ。
 しかし彼がどんなに頑張って全理力を注いでも次界門が開くことはなかった。
 「う〜ん。天聖門は無理だったけどこれくらいなら開けられると思ったんだけどな」
 とても口惜しそうなアリババを尻目に、彼の理力でもどうにもならなかった次界門を開ける手段をロココはシャーマンカーンに尋ねているようだ。



 「わかったぞい。次界門は次界必達天使と呼ばれる天使3人と有限時増力神童と呼ばれるお守り3人が力を合わせて道を開くことができる。」
 「その天使とお守りはどこに?」
 「一人は既にそっちにいるクロスエンジェル。もっとも理力を高めてパワーアップする必要があるが、他の5人が揃えばそれも難なきことじゃろう。他の5人は既に理力も高まった状態ゆえそちらに向かわそう。」
 「どうやって?」
 ヤマト神帝が口にした疑問に皆一様に息を飲む。それもそのはずで無縁ゾーンを突破するために必要なお守り七助のフェザーは片道切符と言う条件の元、クロスエンジェルが持ってきてくれたのだ。
 「それは気にしなくて良い。無縁ゾーンを抜けたことによって、わしとスーパーゼウスの理力で数名程度なら、そなたらのところまでワープさせることができる。」
 シャーマンカーンの説明を聞いてクロスエンジェルが急に顔を曇らせる。本来は天聖界にいるべき彼女がロココや神帝と共に旅できているのは片道切符であったことに他ならない。ゼウスとカーンの理力によってワープすることができるのならば次界必達天使たちと共に天聖界に帰らなければならないのだと彼女は思う。
 そんなクロスエンジェルを見て、神帝たちは互いに顔を見合わせる。無縁ゾーンでエンジェルと合流してさほど日は経っていないはずなのだが、なんとなくエンジェルがいることが当たり前のように感じてしまっている節がある。天聖界での旅の間はずっと共にあった。しかし、それよりもっと深い絆で結ばれていたような気もして神帝たちは不思議な気持ちに襲われる。

 「スーパーゼウス様、シャーマンカーン様、次界必達天使たちのワープの件、何卒よろしくお願いいたします。・・・それと、恐れながらクロスエンジェルは今後も我らと共に旅をすることを許可してほしのです。」
 エンジェルと神帝たちははじかれたように言葉の主、ロココを期待と羨望のまなざしで振り返った。
 「許可する」
 短いながらもはっきりとした口調で了承するスーパーゼウスの隣でシャーマンカーンも小さくだが満足そうに頷く。
 過去の世界での記憶のある3人にとっては神帝たちとエンジェルがともにあった方が事は好転するような気がしていたのだった。




 まもなくやってきた次界必達天使と有限時増力神童との理力をかり、クロスエンジェルは無事にアローエンジェルへとパワーアップをした。
 アローエンジェルは以前とは比べ物にならないほど理力も高まっているようで、裏を返せば今後の旅は今まで以上に気を引き締めてかからねばならないということだろう。

 次界必達天使たちは理力を一つにし、次界必達天使中一番の怪力を持つ聖金太魁が巨大な次界門を押す。
 神帝たちが全員でかかっても開くことがなかった次界門は、今はまるで開くのを待っていたかのようにゆっくりだが自然にと開いていくのだった。



 次界必達天使たちの力を持ってすれば、あまりに自然に開いた次界門を眺めながらアリババ神帝は少しばかり考え込む。
 アリババ神帝は若神子の頃から他の天使が持つことができない力を持っている。それが「どんな扉をも開ける理力」である。
 今までの旅の中でも何度もその理力により扉を開いてきた。
 しかし天聖界最大の扉である天聖門に続き次界への入り口に繋がるこの次界門も開けることができなかった。
 天聖門のときにはアーチ天使が、次界門にも次界必達天使と有限時増力神童と、扉を開けるための理力を持つ天使やお守りがいた。どんな扉も開けられる天使がいるにも関わらず、いくつかの扉は特殊な力を持つ天使の力が必要なのはなぜなのか。
 自分ひとりだけの力では無理でも、仲間などの力を借りて、理力を増力するなどすれば開けられるような使命であっても良いのではないかと人知れず思うところだ。
 多少悔しいという気持ちも禁じえないが、アリババにとってはそれ以上に不思議で仕方がなかった。





 ―――扉は形あるものだけじゃない。心の扉や時限の扉、他の人には開けることが出来ない扉もアリリンなら開けることもできるはずだよ。―――





 「アリババ、何、ボーッっとしてるのさ。早く行くよ。」
 不意に心の中に響いた誰とも知れない、それでいてなんとなく懐かしい声に戸惑っているアリババ神帝に、次界門の先に進もうとしている仲間たちから呆れたような心配しているかのような声がかかる。
 「あぁ。悪い。今、行く」
 仲間とともに先に進むことだけに集中するかのようにぶるぶると頭を振って、仲間達のところへ飛び出した。



 アリババ神帝が、心の声の意味を知るのは、もう少し先のこと。











―――あとがき―――

 いいだけ、放置しまくった「ハピラッキーの絆」の続編です。
 なぜか最終回だけ既に完成しているので(汗)、そこまでを埋めればいいんですけどね。なんともうまく埋まらないのが困りもの。
 当初計画していたより、相当話をかっ飛ばすことになるかもしれません(^^ゞ

 それはともかく、旧ビのストーリー上をたどっているだけのようで、ところどころでディアナやクロノズー、ゲンキやジェロなどの思いも込めたいのです。
 アリババがいないで進む所を、ただ彼を追加して進むだけではなくて・・・
 アリババはただいなかっただけではなくて、ともに旅するということは「ゴーストアリババ」をかっ飛ばすということで、それは曼聖羅との繋がりもかっ飛ばされるということで・・・
 それを独自にまとめようとしたのが、この話なんですけど、やっぱり難しいというか、矛盾する所が出るのが難しいね(^^ゞ




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