「トロデーンを出発するまであと2日ね。我がままなのは分っているけど最後まで一緒に居てね。」
 「分ってるよ。でもサザンビークでもミーティアは絶対に大事にしてもらえるから心配することはないと思うよ。」





 楽しい時、嫌な事が待っている時は本当に時が過ぎるのが早く感じる。
 ミーティアもエイトも口には出さないものの同じ事を感じていた。
 ミーティアとサザンビークのチャゴス王子の結婚式の取りおこなわれるサヴェッラ大聖堂に赴くのは明後日にせまっている。
 エイトは近衛隊長としてサヴェッラ大聖堂までのミーティアの護衛を言い渡されていた。
 本来は近衛隊長としては準備のためにと先にトロデーンを経ったトロデ王の護衛に付かなければならないのであるが、ミーティア自身のたっての希望によりエイトはトロデーンに残っているのである。
 ピアノを奏でることが趣味のミーティアは、心の迷いを吹っ切るように一心不乱にピアノを弾いてはいるのだが、その音色は悲しげでまるで今のミーティアの心をそのまま映していた。
 エイトもミーティアも準備などやらなければならない事は溜まっているのだが、毎日何かの用事につけては会っていたのである。
 トロデーンの者達はエイトとミーティアが幼馴染と言う事もあり、どれだけ離れがたい気持ちでいるのか良くわかっている。
 いつも一緒にいる2人を咎める者は誰もいなかった。





 「やあエイト久しぶりだな。」
 「ククール。ヤンガスもゼシカもどうしたの?」
 その日の午後、旅の準備のため忙しく城を出たり入ったりして部下に指示を送っているエイトの元にかつて共に旅をしたメンバーが揃ってやってきた。
 「どうしたもこうしたもないわよ」少々呆れた口調のゼシカ。
 「おっさんから馬姫・・・じゃなくてミーティア姫の挙式の旅に同行してやってくれって手紙がきたでがすが、兄貴は存じてなかったでげすか?」
 ゼシカの言葉を引き継ぎヤンガスが意外そうにエイトに尋ねた。
 「え!?そうなんだ。ごめん。知らなかった。でも実は陛下はすでにサヴェッラ大聖堂に向かってしまわれてるんだ。」エイトは少々すまなそうに3人に詫びる。
 「エイトが詫びる事じゃねぇだろ。言ってない王様が悪い。」ククールはクセなのだろう、旅の間幾度となく見せていたように肩をすくめて両手を広げて見せた。
 「あはは。陛下もお忙しいからお忘れになってしまったんだね。でも皆が同行してくれるならこんな心強い事はない。姫も喜ぶから顔を出してあげてよ。」
 このエイトの言葉にククールはわずかに「おっ!?」と反応を見せる。
 「あっ。ピピン悪いんだけど、この3人を姫のところに案内してあげて。それと旅に同行してもらうからそれまでの間、部屋を用意してあげてほしい。」
 エイトはククールの反応に気付かなかったのか、近くにいた後輩の兵であるピピンに手際よく説明をする。
 「ああ気を遣わなくていいわよ。姫様の部屋は知ってるから自分達で行くわ。エイトもピピン君も色々準備で大変なんでしょ?」あっさりと言い放つゼシカの言葉を受けてピピンはエイトを見る。
 エイトはというとゼシカにはかなわないね。と独り言のようにつぶやき、「じゃあ好きにしていて」と3人を送り出す。





 「おい。あれはどうよ?」
 ククール、ゼシカ、ヤンガスと慣れた3人だけになったところで、ククールは2人に尋ねた。
 「ククールが声を出して反応するからエイトにばれやしないかとひやひやしたわよ。」そういってゼシカはククールを睨む。
 「何の事でがす?」ただ一人何もわかっていないヤンガスに2人揃って盛大なため息をつく。
 「以前のエイトなら、姫もお喜びになるから顔を見せて差し上げて、くらいこき丁寧に言ったんじゃないか、と言う話だよ」ククールの説明にまだ良く分っていないような顔をしているヤンガスにゼシカが引き継いで口を開く。「前よりエイトの姫様に対する態度によそよそしさが消えたわ。」
 「ねえ。二人に頼みがあるんだけど」ゼシカはククールとヤンガスをちらっと横目に見やる。
 「ハニーの頼みなら何でも聞くぜ」
 軽い口調で言うククールの事は無視してゼシカは続ける。
 「姫様のところに行ったら、何かしらの理由をつけて姫様と私の二人きりにしてくれないかしら?女同士で話がしてみたいの」





 「ねえ姫様、一つだけ聞きたいの。」
 頼みどおりミーティアと二人きりになってゼシカは尋ねる。
 「なんでしょうか?ほかでもないゼシカさんからの質問ですから、何でも答えますよ」おっとりと頷くミーティア。
 「単刀直入にいうわ。姫様はこの結婚に満足しているの?」
 懐かしい仲間に会えてうれしそうにしていたミーティアであったが、そのゼシカの言葉を聞いて見る見るうちに表情を曇らせた。
 何も言わなくてもそれだけで否定と、とらえたゼシカはさらに質問を続ける。
 「生まれたときからの婚約者だとか、国のためだとか、そういうのは私には分らないわ。でも姫様個人の気持ちも大事なのではないの?チャゴスなんかでいいの?エイトが好きなのじゃないの?」
 そんなゼシカの矢継ぎ早の質問に俯いて無言だったミーティアも意を決したように口を開く。
 「ミーティアは小さな頃からワガママで、それなのに皆に大事に育てていただきました。それは姫と言う立場があったからでしょう。これからはそんなトロデーンの民にミーティアが恩返しをする番です。」
 「わかってない。わかってないわよ姫様。トロデーンの国民はあなたが幸せになることを望んでいるわ。もちろんエイトも。」
 ゼシカは持ち前の勝気な性格が物を言い、相手が一国の姫だと言う事すら忘れているかのごとく怒りのような悲しみのような複雑な感情ををあらわにしている。
 実際トロデーンの城下で「遠いところに行かなければならない姫がかわいそう」「姫がいなくなると寂しい」といった意見を数多く聞いていたゼシカは自分の考えに自信があったのだ。
 ひとつ小さなため息をついたゼシカは「考えておいて」と短く言った後、「なんなら手伝うから」と付けたし去っていった。





 ―――ミーティアはどうすればいいのでしょうか?エイト助けて―――





 そしてあっという間に2日は過ぎる。



 「あっ。エイトもう時間なのね?」
 最後の最後までピアノを弾いていたミーティアは、ドアのところに立っていたエイトに気付く。
 「ごめん。邪魔したみたいだ。でもそろそろ行かないと遅れてしまう。」
 そう言うエイト自身も名残惜しさが溢れかえって動くことが出来ないでいる。
 「行きましょうか。」そんな名残を先に振り切ったのはミーティアだった。
 連れたって城の中をあるく二人はさすがに何を話していいのかわからずに言葉は少ない。
 それでもミーティアは搾り出すような、今にも泣きそうな声でエイトに幾度となく礼を告げる。



 ―――ミーティアがどこにいようとオレはいつもミーティアの幸せを祈ってる。だから、だからそんな顔しないで―――






++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 この話、書いてるうちにドンドン長くなる。。。
 最初1話目書いていたときには、全3〜4話って言ったのに5話に伸び6話に伸び。。。
 そして今回5話目書き終わって微妙に6話で終わらせることが出来るかも怪しくなってきた(苦笑)

 それはともかく(?)自分で書いて言うのもなんですが仲間って素晴らしいですね〜♪
 ゲーム中での挙式の場面(特に1回目のED)のときは仲間の素晴らしさに涙しましたけど、自分で書きながら再認識しました(笑)

 ゲーム中、主人公がミーティアを迎えに行くシーンでゼシカはミーティアの部屋の方向から来るじゃないですか。
 そのときに、今回のミーティアとの話のようなことを二人きりで語ったのかな?と。。。
 仲間内では主姫が両思いなのは全員が知るところなのに、妙に他人行儀で近いようで遠い主姫をククールやゼシカは少しイライラしながら見ていたんじゃないかと私は感じています。
 ということで今回の5話目は、そんな初な2人をどうにかくっつけようとたくらんでいる3人を書きたかったんです。
 いやま〜、すでに3話目で書いてるだろうとか突っ込まれそうですが(^^ゞ

 ところでこの5話目、仲間って素晴らしいな〜!ってところ以外見所ナシですね(^^ゞ








小説目次へ

back    next










Photo by.空色地図

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送