「やあ、マイハニー。元気だったかい?」
 「なんなのよ?いきなり・・・・・と言いたいところだけど、来るんじゃないかと思ってたわよ。」



 ここはゼシカの故郷リーザスの村。
 ラプソーンを倒しトロデーン城を後にしてから、ククールは自分自身で語ったようにふらふらと旅を続けていた。
 暗黒神が滅び、町の外に出る魔物もかなり減ったので1人であっても特に苦労する事もなくこの数ヶ月と言うもの過ごしていた。
 しかし旅をするという事はそれなりに各国の噂話も耳に入りやすい。
 あの噂話を聞いたのはサヴェッラ大聖堂に立ち寄ったときの事だった。
 サザンビークとトロデーンの結婚式が、ここで行われる方向で話が進んでいると聞いたのは。。。
 取り乱す事などかっこ悪いと常日頃感じているククールも、その噂を小耳に挟んだときには文字通り取り乱したのだった。
 ククールはゼシカなどには、いつもバカリスマなどとコケにされているものの、頭の回転の速さはパーティー随一といっても過言ではない。
 ものすごい素早さでサヴェッラ大聖堂を後にし、昔の仲間に会いに来た次第である。



 「来るんじゃないかと思ってたか。ふっ。さすがはハニー、以心伝心だな。」
 内心はどうあれ、お決まりの挨拶をするところがククールらしい、とため息混じりにゼシカは応答する。
 「で、どっちを聞いたわけ?それとも両方?」ククールの冗談に構ってるのもバカらしくなって早速ゼシカは本題に入ろうとする。
 その話になると、さすがのククールも少しばかり真面目な表情になり、両方だなと肩をすくめ両手を広げて見せた。



 リーザス村に来る途中のポルトリンクでも噂話を聞いた。いくら居ても経っても居られないといっても、トロデーンと同じ大陸であるポルトリンクなら目ぼしい話も聞けると踏んで酒場によってくる事は忘れていなかった。
 案の定とんでもない話が聞けたというものである。トロデーンの新近衛隊長はとても若くかっこいい方だと。。。
 そんな噂話をしてくれたバニーに「このククール様を目にしてカッコイイなんて言っても良いのかな?」などと冗談は当然言ってきたのであるが、その新近衛隊長がエイトであることは容易に察しが付く。



 「エイトも姫様も王様もそれでいいのかな〜?」先ほどとは別な意味でゼシカはため息をつく。
 「近衛隊長ってのは、確かにすごい出世だろけどよ、あいつはれっきとしたサザンビークの王族の血を引いてるんだぜ。姫様の結婚相手は1歩間違えばエイトだったわけだろ?そんなんであいつは満足できてんのかね?」
 ククールにとってエイトは初めの頃は正直うざい以上の何者でもなかった。いつもニコニコして何を考えてるのか分らなくて無気味だった。ただでさえ不機嫌なときにあの笑顔を見せられると無性に腹が立った。しかし、それを当り散らしてもあいつは何一つ変わる事はなかった。
 正直あの頃は自分が世界一不幸だと思ってたからな。兄貴は嫌味な奴だし、修道院は追い出されるし。もちろん修道院は自分から願い下げではあったが。。。

 「エイトの事になると熱くなるわね。あんたにとってエイトって唯一の親友ってやつなんでしょう?」
 そんなゼシカの言葉にククールはドキリとする。まさに図星だったのだ。
 修道院では友と呼べるような人間はいなかった。自分から深く付き合うことを拒んできた。
 人間関係などそんなもんだと思っていたククール。
 しかしエイトは違った。お節介焼きでいつの間にかククールの深く付き合わないでおこうという壁を壊してしまったのである。
 「なにたじろいでんのよ?でもね、そうやって熱くなってるククールは私嫌いじゃないわよ。エイトをお節介焼きって言ってるけど、今のあんたも十分お節介焼きよ。」
 そう言ってにっこり笑うゼシカは、あんたのお節介焼きに協力するわ、と付け足した。





 「ところでゼシカ。その前に一つ聞いておく。」
 いつものふざけたククールはどこへやらで、どう切り出そうかと考えあぐねた表情をしている。
 「なによ?」ククールのいつもと違う様子に戸惑い気味なゼシカはぶっきらぼうに尋ねる。
 さすがに意を決したククールは口を開き始める。
 「俺にとってはエイトと姫様がくっ付いてもらわないとヤバイ理由ってもんがもう一つある。が、お前はいいのか?」
 「なによ?それ」ゼシカは心底不思議そうな表情である。
 「いや、だからさ。お前はエイトの事が好きなんだろう?ってことだったり・・・」
 さすがのククールも相当言いづらかったらしく、途中口ごもりながら尋ねる。しかしそれに対するゼシカの返答は簡単だった。
 「いいのよ。今更隠しても仕方ないだろうから言うけど、確かにエイトが好きだったわ。というか好きだと思ってたわ。」
 一度言葉を切ってウィンクまでしてみせた。
 「でもね、なんていうのかな?姫様のことが大好きなエイトが好きだったって言うのかな?なんとなくあの優しさがサーベルと兄さんを思い出してただけって言うか」
 そんな言葉にククールは本当にいいのか?と瞳が語ってるような気がしたゼシカは付け足す。
 「本当にいいのよ。で、あんたのエイトと姫様がくっ付いてほしい理由ってなんなのよ?」
 そんな、あっけらかんとしたゼシカにククールもいつもの調子を取り戻す。
 「ふっ。そんな野暮な事は聞いちゃいけないぜ。ハニー。エイトと姫様くっつけよう大作戦が成功を収めたら語ってやるよ。」





 「で、ククール。そのエイトと姫様をくっ付けよう大作戦って、どうすればいいのかしら?エイトが出生の秘密を言うつもりがないんだったらお手上げのような気もするんだけど」ゼシカはいきなり考えにつまっていた。
 「あぁ。実はエイトの出生のことは俺が王様に語っといたよ。」あっさりと言い放つククールにゼシカは目を丸くする。
 「なんですって?あんた、エイトと言わないって約束したじゃない」
 「そりゃそうだけど、あのままじゃにっちもさっちもいかないと思ってたんだよ。それにエイトが心配するような事は起きないのはハニーだって分ってるだろ?」
 エイトは自分の出生の秘密を知られるとトロデーンにいられなくなる事を心配している。しかし端から見ればトロデ王もミーティア姫もエイトに頼り切っている部分があった。エイトにどんな出生の秘密が隠されていようとも、あの2人がそう簡単にエイトを城から追い出すようなマネはするはずないのである。
 エイトとの約束をあっさりと無碍にしていたククールに腹は立つものの、ククールの言うことは至極ごもっともな話だとゼシカは思った。

 「じゃあ王様全部知ってるんだ。知っててチャゴスなんかと未だに結婚させようとしてるのか。。。どうすればいいんだろう?」
 「諦めるのはまだ早い。いざとなったら花嫁強奪でも何でも俺はやるぜ。」
 怖ろしい事を言うのね、と肩をすくめて見せたゼシカだったがまんざらでもないような顔をしている。
 「実は今ヤンガスがサザンビークまで様子を見に行ってるんだ。ここに来る前に俺はパルミドにも寄ってきたもんでね。リーザスの村にあいつも来る事になっている。ヤンガスにとってもエイトの一大事だ。仕事は抜かりないだろうよ。」
 ゼシカは自分の知らないところで色々と準備しているククールに舌を巻く。
 「じゃあ、しばらくはあんたはリーザスに居るって事ね?小さな村だし毎夜酒場に入り浸れたらたまったもんじゃないわ。なんらうちに泊まっていきなさいよ」





 ―――エイトがやるんならどんな事でも手助けするぜ。俺たちは仲間だからな―――








++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 やたら書きやすいんですけど(^^ゞククール視点&ゼシカ口調(笑)
 改めて思いますけど、ククールって楽しいキャラですね〜(笑)
 ククールはエンディングで主人公に「俺たちは仲間だろ」みたいなこと言ってますが、正直私はジーンと感動でした!!!

 ちなみに話それますけど、旅の間の情報収集能力ってククールとヤンガスが群を抜いてたんではないかと思ってます。
 ククールは酒場で、ヤンガスは裏通りでって感じで(笑)

 それと解説しないとわかんないかもしれないので、一言(^^ゞ
 今回ククールが言ってる「エイトと姫様がくっ付いてもらわいとヤバイもう一つの理由」はゼシカの事です。
 ゼシカは主人公の事が好きだった(私の予想)なわけで、ゼシカが好きな(これも私の予想)ククールにとってはエイトが一人身で居る事はヤバイのです(笑)








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