++るろうに剣心++
十勇士陰謀編

第4章〜現実

「あれ?私・・・ああそうか、私剣心さんに会って休ませてもらってたんだった」
目覚めた直後は見慣れぬ風景に戸惑いを隠せなかった輝だが、徐々に剣心とのことを思い出してきたようだ。
「あら?輝ちゃん起きたのね。ゆっくり寝られた?」
「ごめんなさい。名乗るの忘れていたわ。私は神谷薫、一応この道場の師範をやってるのよ。」
「あなたのことは剣心に聞いているから、ゆっくりしてね。」
剣心が言っていたように、優しく微笑むこの薫という女性に輝は安心感を覚えた。
「勝手にお邪魔してすみません。剣心さんにも色々お世話になって・・・あの!なにかお手伝いさせていただける事とかありませんか?」<BR>
「手伝いなんていいのよ。でも身体が大丈夫ならちょっと会ってほしい人がいるんだけどいいかな?」
薫の問いかけに輝は不思議そうに答える。
薫はゆっくりと頷き、輝を奥の離れに連れて行く。

「あっ、こんにちわ」
その離れでは、15、6の少年が迎えてくれた。
「僕は聖と申します。輝さんは記憶を失っているようですが僕はあなたを探していたのです」
その言葉に驚きを隠せずに、輝は言う。
「私をですか?なぜ?私は何者なのです?あなたにお会いした事があるのですか?私は誰なのです?」
自分を知っているものに合えた喜びと、何も思い出すことの出来ない腹立ちで矢継ぎ早に質問する輝を、幼さの残る優しい瞳で聖は制する。
「残念ながら、僕は輝さんにお会いするのは初めてです。ですが、あなたに会いたかった。」
一瞬、どのように言葉を続けるか迷った聖だったが思い切った様子で最後まで言う。
「僕の育った村は今十勇士と名乗る悪者に滅ぼされました。僕はその時にこの九字切の太刀の伝承者として村の皆の犠牲の中、命からがら逃げ出したのです」
信じられないといった表情で聖を見つける輝に気を遣ってか聖は一度言葉を切る。
これから聖の口から発せられる言葉は記憶がなく不安定な輝の心に耐えうる事が出来るか。。。
そんなふうに考えながらも、思い直したように続ける。
「あなたの育った里も、僕の村と同じように滅ぼされたのです。僕の持つ、この九字切の太刀と対をなす十文字の懐剣の伝承者であるあなたを除いて。。。」
「待って下さい」
なおも続けようとする聖に輝は聞きたいことが色々あった。
「突如こんな事を言われても驚くのは当然ですよね。僕も焦りすぎました。」
悪い人じゃない。この人は信用できる。輝の直感がそう言っていた。
「あなたの村とか、私の里は滅ぼされたって言いましたよね?なぜなのです?あなたの先ほどの言い方では私の里の者で生きているのは私だけみたいでしたけど。。。」
一瞬、言葉を切ったものの、輝は続ける。。。
「それに、なぜ滅ぼされなきゃいけなかったのですか?その九字切の太刀とか十文字の懐剣とは一体なんなのですか?」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
実際は2〜3秒なのだろうが輝には長く感じる。。。
「僕の村もあなたの里も何も悪い事はしておりません。そして残念な事にあなたの里の生き残りはたぶん輝さんだけかと・・・。」
その時のことを思い出したのだろう。声を詰まらせながら聖は答える。
それからの聖に話は不思議な話だった。
聖も輝も神爪と呼ばれる民で、神爪の民とは神もが恐れる力を有した集団だとか。。。
そんな神爪を恐れ、何十年も前のお偉いさん方が神爪を滅ぼそうとしたとか。。。
そのときの生き残りが逃げ延びて作ったのが聖の村と輝の里。。。
そして、神爪に伝わる最強の奥義は、九字切の太刀と十文字の懐剣が揃う事が条件だとか。。。
「最強奥義のことは、伝説で伝わってるだけで僕も詳しくは分りませんけどね」
と、照れたように笑った聖だったがきゅっと眉を寄せ言う。
「伝説でも何でもいい。僕は村の敵を取りたいんです。記憶のないあなたには酷な話とは思いますけど協力してほしい。そのためにあなたを探していたのです」
最後は怒鳴るような口調になってしまった事を反省したのか、ゆったりとした口調で付け足す。
「もちろん、無理強いはしません。輝さんが嫌なら僕は一人でも敵を取れるように修行しますから」



第5章〜決心

輝は眠れない夜をすごしていた・・・。
正直に言うと、聖の言う事が信じられないんだ。。。
聖の様子を見れば本当のことだということは、分っているのに。。。信じられない。。。
輝は里を失った悲しみで記憶喪失になったのではないかという事だった。
そんなにひどい様子だったのだろうか・・・。
輝は十文字の懐剣に目をやる。これが伝説にまで伝わるようなものだったとは信じられないのである。
その他にも色々考えさせられる。。。
それでもどのように考えても結論は一つだった。
「聖とともに今十勇士を倒す」
記憶のない輝には今十勇士にどんなことをされたのかはわからない。
それでも、自分を見つける唯一の鍵である聖が敵を討つと決めている以上、共に戦えば何かがわかるかも知れない。
それが、どんなひどい事であったとしても育った里のこと、家族の事、友達の事思い出したい、思い出さなくては・・・・。
「なんかちょっとおっちょこちぃそうな、聖を一人で行かせるなんて心配だしね」
輝は独り言のようにつぶやくと、今まで眠れないで考えていたのが嘘のように気持ちよさそうな寝息を立て始めた。

翌朝の輝は、何かが吹っ切れたように明るかった。
「ひ・じ・り」
茶目っ気たっぷりに呼ぶ輝を見て聖は驚いた様子で答える。
「あっ輝さん、おはようございます。どうしたのですか?」
「昨日の件なんだけど、私も一緒に行くわ。」
「本当ですか?」
そんな輝の返答に聖までがまるで悲しみを乗り越えたかのような笑顔で微笑む。
「どうせ、私の記憶についての手がかりはあなたにしかないしね。正直な話、敵とか言われても良く分らないけどそれでもよければ・・。」
出会って、まだ2日の二人が顔を見合わせて大笑いする。。。
なにが可笑しいのかは分らなかったが、涙が出るまで二人で笑った。
それは、まるで二人のこれからの厳しい戦いに備えるための決心に近い笑いだったのではないか。。。
「決心したら、早いほうがいいわ。明日にでも旅立ちましょう。今日はとりあえず薫さんと弥彦さんにお礼を言わなきゃね」



第6章〜出発

「てんめー俺の飯食うな!」
「ふん!ボサっとしてるほうが悪いんだよ、ぼうず」
「2人とも恥ずかしいから、こんなところでケンカしないでよ」
順に弥彦、左乃助、薫のセリフである。。。
輝と聖は2人で旅立つ予定だったのだが、薫の「二人でなんか危ないわ」という一言から、なんと6人という大人数での旅となったわけである。
言い出した薫を始め、正義感たっぷりの弥彦。。。
口では「いつも嬢ちゃんには飯を食わせてもらってるから、つきあってやるよ」なんて悪態はついてはいるものの、その実一本気な左乃助。
そして6人目は、当初は今十勇士に操られて神屋道場を襲いに来たものの「自分を操った奴を生かしておけねー」と息巻いて付いてきてしまった隼人である。
「聖君、輝ちゃんごめんね。。。バカみたいな連中ばっかりで・・・。」
薫は申し訳なさそうにあやまる。
「いえ、皆さんとても楽しくてうれしいです。ね?聖?」
「はい!こんな素敵なメンバーで旅ができるなんて思ってもいなかったので・・。」
すっかり打ち解けた聖と輝は薫にはちきれそうな笑顔で答える。
「それでよ」
ずっと黙っていた隼人が口を開く・・・。
「とりあえずはどこに向かうかな?俺が知っている限りは今十勇士の奴らはそれぞれ、あちこちの地域を恐怖に陥れているようなんだ」
さすがにまじめな話になったのを感じて、先ほどまでけんかをしていた弥彦と左乃助も話に加わる。
そこで薫が隼人の話を引き継ぐ。
「さっき隼人さんが言ったように、あちこちでいろんな事件があるらしいの。それがすべて今十勇士の仕業かどうかは分らないんだけど・・・。」
一同の顔を一通り見渡し、薫は言葉を続ける。
「とりあえずは剣心が下妻町になにかを調べに行ってるわ。私たちは途方にくれているわけだし、剣心と合流しましょう?」
「あーそうだな。しかし剣心の奴なにを調べてやがるんだ?」左乃助が最もな疑問を口にする。
「あの・・・。」輝が遠慮がちにつぶやく。
「私が剣心さんに助けてもらった場所が下妻町なのです。どうしてそこに剣心さんがいたのかも、私がなぜそこにいたのかもよくはわからないのですが。。。なにかがあるのではないでしょうか?」
「そうだな。とりあえず行こう!考えるより行動だな」
隼人の言葉に弥彦と左乃助の二人は大きくうなずく。
「もう。。。3人ともバカなんだから。。。」
薫がそう言うとその場は笑いの渦に飲み込まれた。

第7章へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送