「ワンダーマリアは、とても良くしてくれました。まるで妹のように・・・悪魔たちの間では、たかだか新参者であるはずの私にです。今考えるとそれが不思議なのです。」





 次動ネブラの中央に建っていた魔幻型と呼ばれていたおどおどしい塔は、ヘラ王女がダークヘラとしてワンダーマリアに操られていたときの知識を基にして、神帝たちが破壊することに成功した。
 しかし、このたびの悪魔たちの行動は、今までにないほどのものだったこともあり心配したヤマト爆神とストライクエンジェルは、この次動ネブラに残ることとなった。
 他の6神帝は、すぐにでも次界の奥地へと旅立つつもりであったのだが、せめて疲れを取ってから旅立ってほしいというヘラ王女の希望により数日間の休養をさせてもらっていた。
 そして、ついに翌日には6神帝が旅立とうと決意した日の夜、ヘラ王女は神帝隊とストライクエンジェルに気になっていたことを話し始めたのだった。



 「ワンダーマリアってさ、根っからの悪いやつではないと思う。」
 ヘラ王女の言葉を受けて、アリババ神帝がぽつりともらす。
 長い間、神帝たちが争ってきたのであろうワンダーマリアへの言葉としては、いささか意外に思いヘラ王女は不思議そうな表情で再び口を開いた。
 「どうなんでしょうか?この次動ネブラを破壊しようとしたことは私には許せません。しかし・・・なんというのでしょうか。少なくとも悪魔であった私にとっては唯一無二の頼れる存在だったのです。」





 「ワンダーマリアも寂しかったんじゃないかな?大事な人をどんどん失いまくってさ。」
 そんなアリババ神帝の言葉に、はっきりと頷くのはストライクエンジェルで、その他にも神帝フッドや神帝ピーター、神帝男ジャックそして牛若神帝も合点の行く様な表情をしている。
 敵であろうとも長い間、彼女とは付き合ってきている。それなりの心の変化は読み取れている者が大多数であった。
 逆に完全にハテナマークを飛ばしているのはヤマト爆神と一本釣神帝だ。
 「・・・えっ?なに?どういうことなのさ?」
 「さっぱり意味がわかんねぇ!どういうことだよ!」
 話についていけていない二人に、他の皆はまるで馬鹿にしたような呆れたよう瞳で眺めながら、それぞれため息をついた。



 「ワンダーマリアはヘッドロココ様を愛しておりますの。そしてロココ様もおそらく同じ気持ちでいらっしゃいましたの。」
 この調子では、いつまでたっても話が進まないとストライクエンジェルがヤマトと一本釣に説明をする。
 その言葉に二人揃って上へ下への大騒ぎをしている所を見ると本当に全く気付いていなかったのかと皆はそろって改めてため息をつくのだった。



 「でもよ、だったらなんでワンダーマリアはロココ様を襲ったんだ?」
 驚きも落ち着いて少しは冷静になったのか、一本釣が不思議に思ったことを口にする。
 それに答えたのは少人数での行動時には、決まって彼と一緒になる牛若神帝だ。
 「・・・分ってませんね。相変らず、あなたと言う人は・・・。そこはお互いの立場と言うものがあるのでしょう。」

 強力な力を身に付けたワンダーマリアをスーパーデビルは快く思っていないらしく、最近では悪魔軍はスーパーデビル派とワンダーマリア派に二分されているようだ。
 そして、下級の者達は様子を見ながら二派をそれぞれ行き来している者もいる。これではトップ二人にとってはいつ寝首をかかれるか予断を許さない状況なのだ。
 両者にとっては、天聖軍との戦い以上に熾烈な争いになってるのかもしれない。
 しかし、悪魔として生まれた者たちは天使たちに苦しみや悲しみを負わせることが己らの使命だと思っているものがほとんどでトップ二人としても、それぞれに天使軍を襲う役割も担う。
 つまりは、いくらワンダーマリアがヘッドロココに好意を寄せていたとしても悪魔軍のヘッドとして、その想いは叶うものではないというのが結論で、自らの身の破滅を意味するようなものと考えていたのではなかろうか。



 「次界に着いて天使も悪魔もお守りも仲良く暮らせるようになったら、うまく行けばいいなぁって思ってたんだけどね。」
 アリババ神帝は自嘲気味に、少しばかり遠くを見つめながらポツリとつぶやいた。

 ヘッドロココが逝った直接の原因はワンダーマリアからの攻撃だったのだ。
 ロココを守ることを使命としていた神帝たちにとってワンダーマリアはもちろん憎い。けれども彼女自身も心を痛めているのではないかと憎みきれない部分も少なからずあるのが事実。
 今は敵ではあるけれど、いつか仲良くなれる日も来るような、そんな予感すら秘めている。







 翌朝、ヘラ王女、ヤマト爆神、ストライクエンジェルと別れを告げて、最後に6人は次動ネブラを上空から見渡した。

 「・・・朝露の中で見る一面の緑。そしてヘラ王女が作ろうとしている遊園地。やっぱり次界はすごくきれいな場所なんだ。」
 神帝ピーターのしみじみとつぶやくその言葉は、多少彼独特の演技がかっていたが、それでも皆、思う所は一緒である。

 「平和を手に入れなくてはならないな。」
 一時とは言え平和を目にし、全世界にそれを広めたいと神帝フッドは思う。

 「まだ、戦いは続くでしょうから気を引き締めないといけませんが、その日はもう遠くないと信じましょう」
 彼の言葉に同意して、その日に思いをはせるのは牛若神帝で。

 「あぁ、そうだな。すでに次動ネブラでは天使と悪魔とお守りが共存し始めている。」
 ヘラ王女の元に集まった者たちの中に天使やお守りだけではなく数は少ないものの悪魔の姿もあったことを神帝男ジャックは思い出す。

 「みんなで幸せになりたいよな。」
 みなの言葉を受けて、アリババ神帝はしみじみとつぶやいた。

 「そのためにはオレたちが頑張んねぇと話にならねぇぜ。」
 それぞれの言葉にうんうんと激しく頷いて、一本釣はみなに気合を入れる。





 「さぁ、行こうぜ!」
 誰ともしれず掛声をかけ、6人は次動ネブラを後にした。









―――あとがき―――

 まだ次動ネブラですか!?と自分に突っ込みたいです(^^ゞ
 この「ハピラッキーの絆」は次動ネブラに到着するまでは、色々すっ飛ばしてきているというのに、4章5章連続で次動ネブラにとどまっているなんて(笑)
 ま〜ただ、ここらへんは重要だと思うんですよね。
 しかも、ゴーストアリババがいませんから、魔洗礼とワンダーマリアの聖心(おそらくノアから引き継いだ)とダークヘラの関係が神帝たちにとってはちんぷんかんぷんなはずですから。

 ここから先はアニメではたった2回で駆け足どころか100M世界記録並(爆)に駆け抜けて、知らぬ間に溺死した神帝たち(泣)ですが・・・
 さすがにそれは嫌です!オリジナル要素満載になって行くと思いますが、もう少しお付き合いくださいまし。

 ちなみに・・・アリババに「みんなで幸せになりたいよな」って自分で言わせたくせに、自分でツボにはまって泣けた。できれば『公式』でみんなで幸せになってもらいたいんだ。




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