ファイナルファンタジー12レヴァナントウィング 「あ、アーシェこんなところにいたのか。」 ベイルージュの片隅に一人たたずんでいたアーシェを見つけて、ヴァンは満面の笑みで語りかけた。 「えぇ。だめかしら?」 「お前も変わんないなぁ」 少しばかり突き放した物言いなアーシェであったが、それに特別に気を悪くした様子はヴァンにはない。 前回の旅を解散し、パンネロ以外とはほとんど会えなかった。 バルフレアとフランに関しては行方すら分からなかったのだから言わずもがなだが、女王に即位したアーシェと、ダルマスカの英雄と言う名は捨てたもののジャッジマスターとして生きることにしたバッシュは、ヴァンやパンネロにとっては雲の上の存在なのだから。 王宮にたたずんでいたり、城下に視察に来ていたアーシェのことは結構見ていたが、その時にはいつも優しく微笑んで民から愛される女王だった。 だがヴァンにとっては、その微笑みは民を大切に思う女王の心こそ見えても、気の強さや照れ屋で頑張り屋な、彼女本来の心は全く見えず、自分たち貧民(今はアーシェがこの言葉を良しとせず皆が同じ国民となったのだが)のことは、もう過去の出来事として忘れられているのかと思っていた。 だが久しぶりに会ったアーシェは全く変わっていなかった。 憮然とした表情も突き放したかのような言葉も何もかもが懐かしい。そんな気持ちでヴァンはいつものように手で鼻をかいて、へへへっと笑った。 「・・・変わったわよ。あの旅の終わり頃からあなたに『お前』と呼ばれてもいやな感じはしなくなった。そして何より、今久しぶりに聞いたヴァンの図々しさがとても懐かしく感じたのよ。」 そんな言葉に、少しばかり驚いたような表情になった目の前の少年を、相変わらず馬鹿っぽいと思い、口元だけで小さく笑った後、アーシェは言葉を続ける。 「戦いを肯定することは決してないけれど、それでも、またあなたたちと旅をして戦えることを少しうれしく思っているわ。しばらくの間、またよろしくね。船長さん」 1年前のあの戦いのときのアーシェは、たった一人でダルマスカの命運を肩に背負っていた。 あのときの彼女も本来の彼女じゃなかったのだろう。自分はあの彼女しか知らなかっただけ。 今、ヴァンの目の前で、軽くウィンクしながら笑うアーシェが本来の彼女。 自分の知ってる1年前の彼女よりさらに素敵な女性だと感じるヴァンだった。 |
Photo by.空色地図
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