「サラ姫様お元気ですか?」
 その少しばかり懐かしい声に、自室で書類に眼を通していたサラ姫は顔を上げる。





 光の戦士が、この世界を救ってもう数ヶ月が経つ。
 あの長い戦いが嘘のように、今は平和でそれでいてのんびりとした生活をそれぞれが営んでいた。
 レフィアも例外ではなく血が繋がっていないというのに自分をここまで育ててくれた、少し、いや、かなり頑固者の父タカの元で鍛冶屋の修行をしている。
 だが、もとより活発で行動派のレフィアには少しばかり退屈な日々でもあり、恩義はあるものの父の頑固ぶりに少々苛立ちがあるのも事実。
 そんなわけで、平和すぎる今、一つばかり関心ごとあるわけだ。



 もっぱらの関心ごと、それはもちろん、あの旅の仲間の一人で頼りにもしてきた兄貴分のイングズと彼の仕える姫様こと、サスーン王の一粒種サラ姫の仲である。
 あの旅の帰り道、平和になったことへの喜びに加え、シドとおばあさん、デッシュとサリーナのアツアツカップルに刺激を受けたこともあろうが、サラ姫はずいぶんと積極的であったから。
 突っ込みの一つや二つ入れてやりたいと何度も思ったくらいに鈍感まっしぐらなイングズでも、さすがにあれだけ言われればサラ姫の気持ちは伝わっているであろう。
 誰がなんと言おうとサラ姫はイングズしか見ていない。いや、正確には見えていないといったほうが正しい。
 ウルでルーネスとアルクゥと、そしてカズスでレフィアと分かれた後、二人はノーチラス貸切でどこへ行ったのか。気にならないほうがおかしい。
 そんなわけで、レフィアは現在は数日間の家出中で、彼らの様子を見に、サスーン城へとやってきた。



 「レフィア、久しぶりね。元気かしら?」
 サラ姫も、イングズの妹分が遊びに来てくれたことが嬉しくたまらない様子だ。
 相変らず、表情豊かで楽しそうにしているサラ姫に思わずレフィアのほうも微笑がこぼれる。
 この調子なら、目的のほうもいい感じで進展しているかもしれない期待に胸が高まる。

 「ところで、サラ姫、イングズとはどうなの?」
 レフィアらしく、遠慮も何もなく、単刀直入に切り出してみる。
 ところがサラ姫のほうはなんとしたことか、一瞬で泣きそうな顔になってしまう。これにはレフィアは焦った。
 しばらく会っていないとは言え、イングズは彼女のことを大事にしているのは一目瞭然だったはず。
 絵に描いたような鈍感なので「愛」と言う感情であることを理解しているかどうかは定かではないものの、彼がサラ姫を悲しませることをするとは到底思えないのだ。



 「ねぇレフィア。イングズは私のことどう思ってるのかな?」
 頼りなさげな声で尋ねてくるサラ姫に、何と言っていいものか考えあぐねた挙句、何も思いつかずにレフィアは口ごもってしまう。
 「だって、イングズは何も言ってくれないのですもの。私は大好きなのに・・・」
 本格的に泣き出しそうになってきたサラ姫に「大丈夫よ」などと一般的な慰めしか言ってやれない、普段は言葉がポンポン出てくるのにいざと言うときには誰の力にもなれない、そんな自分が少々憎たらしく思うレフィアである。
 ところが、その数分後にはその考えをこの件に関しては、自分が思い悩むことではないと悟ることになる。



 「毎朝二人きりでお散歩してるし、部屋を出るときにはかならずイングズが送り迎えしてくれてるし、遠乗りの時だって二人になれること多いし、寝る前に挨拶に来てくれるときだって毎晩二人で話をしているのに、何にも言ってくれないんだもん。」
 サラ姫は相変らず泣きそうなままだが、レフィアは思い切り脱力した。
 イングズの鈍感ぶりも恐ろしいが、それ以上にこの姫様の天然ぶりはある意味では凶器だ。
 今、サラ姫の口から語られたことは、愚痴と言うよりはレフィアにしてみれば、そんなに二入きりで会うことがあるの?と突っ込みを入れたい。
 彼女は彼女なりに真剣なのだとは思うが、惚気にしか聞こえない。
 独り身の立場も考えてよね、こちらが愚痴りたいと、サラ姫とは別な意味で泣きたくなって来る。
 でもそれが、サラ姫のサラ姫らしいところで、少しばかり言葉が足りないのはイングズのイングズたる由縁だろうか、微笑ましいといえないこともない。




 とんとんとん。
 ちょうどその時、サラ姫の部屋の扉がノックされる。
 「サラ姫様、お茶をお持ちしました。」
 それは今まさに話題の人物の声。
 しゅんとしていたサラ姫のほうは、途端にうれしそうな表情に逆戻りし、彼を迎え入れた。入ってきた彼の顔も姫に負けず劣らず嬉しそうで、和やかだ。
 イングズはこの城の兵士としてとても忙しいはずで、それにも関わらず、普通ならメイドにやらせてもよさそうなことまでして、サラ姫に会いに来ていると言ったところか。
 やはり、全く心配することはないことが判明し嬉しい反面、あまりに幸せそうな二人からはすっかり忘れ去られていることへ少々の憤りが沸いてくるレフィアであった。





 正式にくっつくまでには、まだまだ時間はかかりそうだが、既に二人の世界を作り始めている彼らを暖かく末永く見守りましょう。
 鈍感と天然の掛け合わせは、見守るだけでも周りは苦労するであろうけれども―――









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 FF3での2作目!
 クリア記念と言うべきか・・・エンディングでのサラ姫様のセリフにいちいちときめいて突発的に(笑)
 私の中ではイングズは仲間達にとって頼りになるお兄さん的存在だけど鈍感まっしぐら〜!サラ姫は積極的なんだけど、その実はかなりの天然さん♪

 前回のルーネス×エリアが、明るさのかけらもなく・・・どっぷり暗かったので、今回はほのぼの〜♪になって嬉しい!
 ルーエリのほうは、どうあがいても明るい話は書けそうにない(ほのぼのはやりたいけど)ので、グズサラでその分とことん明るくしたいです(笑)
 ところで・・・さっきも書いたようにイングズは仲間内でも頼られていた存在だと思うのだけど、カプなしの話とかで「イングズと仲間達」みたいのも書きたいと思ったり(^^ゞ
 FF3楽しすぎて妄想が沸いてきます(笑)
 ビバ!FF3〜♪




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