あの日、全てがなくなったような気がした。
 ミーティアの幸せもトロデーンのみんなの笑顔もオレの居場所も―――



 深夜の城の護衛は交代でする。調度オレが屋上で見張りをしていたときだった。
 「ドーン」と言う地響きに似た衝撃を受けた。
 気付いたときには空は無気味な雲に覆われ、周囲は茨だらけだった。
 あまりの現状に気が狂いそうになるのを抑えながら、まともに動ける人間を探した。
 ミーティアや陛下が無事であることを無心に祈ってたと思う。
 気付いたときには、城の最上階、魔法陣の間で魔物に姿を変えた陛下と白馬に姿を変えたミーティアのそばで放心していたようだ。



 青白い顔で駆けてきたエイトを見てトロデ王は悟った。
 無事だった人間はエイトだけなのだろうと。。。
 いや、すぐ傍で茨に包まれている兵士を見る限りエイトだけでも無事で良かったと思うほうが正しいかもしれない。
 しかしワシが魔物にとミーティアが馬にされたと知るや否やエイトは、まるで感情を忘れたかのように膝を付き、そのままピクリとも動かない。
 エイトは元々感情表現が苦手な子供であった。この状況を見て再び感情がなくなるのではないか。。。
 「ドルマゲスの奴がな・・・」ワシは言ってから後悔した。
 頭を垂れ搾り出すような声で謝るエイト。こやつは自分を責めている。自分がドルマゲスから目を離したからと。。。
 エイトにドルマゲスは怪しいと言われたときに、すぐに追放しなかったワシのせいじゃと言うのに。
 今のエイトに言葉をかけても聞く事は出来ないだろう。城の現状を把握する事が先だ。家臣たちの変わり果てた姿を見る事になるのだろうが王として城を回っておかなければ。。。



 ミーティアはなぜかお馬さんになっていました。お父様は緑色の魔物に。魔法陣の外で見張りをしていた兵士は茨に包まれていました。なにが起こったのでしょうか?
 そんなときエイトが来てくれた。エイトが無事だと知ってミーティアは本当に嬉しかったです。
 でもあなたは。。。エイトは。。。無表情で、今にも壊れそうなそんな感じで。。。
 「大丈夫よ」そう声を掛けたいのに「元気出して」って慰めてあげたいのに、お馬さんになったミーティアは話す事が出来なくて、仕方なくあなたに顔を近づけてなでて上げました。
 エイト、ミーティアはあなただけでも無事で本当に良かったと思ってるの。そんな顔しないで。





 「エイトや。少しは落ち着いたか?」城の見回りが終わったトロデ王が声をかける。エイトはビクッとわずかに反応し抑揚のあまりない小さな声で答える。
 「・・・・・申し訳ございません。陛下や姫のほうがお辛いのに家臣の私が取り乱しまして・・・・」
 「細かい話は後じゃ。今、城を見て歩いたがやはり自力で動くことが出来るのは我ら3人だけのようじゃ。そして悪い事にこの茨は、まだかすかに動いている。早く脱出しないと危ういかもしれぬな。」
 少し間を置いてトロデ王は続ける。
 「旅支度をせい。これからワシはこの忌わしき呪いを解くために旅に出る。そなたも付いて参れ」
 「はっ」
 「時間がないのじゃ。ワシも早急に必要なものを集め荷馬車に積もうと思っておる。そなたは動きやすい格好に着替えて参れ。トロデーンの兵だと分らなければどのような格好でも良い。」
 「かしこまりました。早速行ってまいります」
 そう言うエイトはやはりほとんど感情がない。しかし、さすがのトロデ王も今この状況で考えていられる問題ではないと判断したようで、自室に戻り旅の準備にかかる。





 なんでオレだけ、なんともなっていないんだ。わからない。わからない。
 自室の机の前で問答を続けるが、ギシギシと言う音にハッと我に返る。陛下が言うとおり、ここに長い事いると危ない事を予感させた。
 近衛兵に与えられる兜を脱いで机の上に置く。
 9歳の誕生日にミーティアにもらったバンダナ。陛下にも「大事にしてやってくれ」と言われたバンダナ。生まれて初めて心を暖かくさせてくれたバンダナ。
 オレは、このバンダナに今までも何度も何度も勇気をもらった。
 これからはミーティアと陛下、そしてトロデーンのみんなを救うために勇気を下さい。
 そう願いを込めてキュッと頭に巻いた。





 「エイトぉ〜〜〜。。。」
 トロデ王が情けない声を出している。
 「どうなさいました?どこか痛められましたか?」慌てて問いかけるエイト。
 「いや。そうじゃないのだ。ワシは色々必要なものを荷馬車に積んだのじゃが。。。肝心の馬がいないのじゃ」
 馬小屋にいた馬も皆、茨の呪いに犯されてしまった。
 「私が引かせていただきます。どのようなものでもお積み下さい。」
 エイトは真剣な眼差しで言い放った。陛下や姫やトロデーンのためならどんな事でもする、その瞳はまるでそう語っていた。
 「ひひ〜〜〜ん」
 馬となったミーティアが突然嘶き馬と荷馬車を繋ぐベルトを口にくわえ荷馬車の傍まで歩いていってしまった。
 「・・・・・まさか、ミーティアよ。そなたが馬車を引くと言っておるのか?」トロデ王のつぶやきに満足そうに頷くミーティア。
 「そのような事はいけません。姫に馬車を引かせるとは持っての外。私にお任せ下さい」
 エイトは大慌てで止めに入る。
 「・・・・・いや、エイトの気持ちはありがたいが、今はミーティアに任せようではないか。傍目にはミーティアに引いてもらうのが一番自然に見えるじゃろうて。」
 「・・・・・しかし・・・・・」
 「しかしもなにもないわい。命令じゃ。それに、エイトが引いたら誰が魔物と戦うというのじゃ?魔物と戦える人間はそなたしかおらんのじゃぞ。しっかりせい。」





 ―――ごめんね。ミーティア。オレはミーティアとトロデーンを守るために兵になったのに―――





 ヤンガス、そなたには感謝しなくてはならないかのう。。。
 あの日から数週間。エイトの心の底からの笑顔は隠れたままじゃが、笑みを浮かべることは出来るようになった。と言うか表面上は常に笑顔である。
 トロデーンを救うため、ワシやミーティアの手前辛い顔など見せられないという強い意思の表れなのじゃろうが、ヤンガスのわけ隔てない図々しさがエイトにいい刺激を与えたかも知れぬな。
 もっとも涙一つこぼさぬが。というより涙すら出てこぬほど辛い思いを抱えているのはあきらかじゃが。つくづくかわいそうな奴じゃ。
 トロデ王は一人思う。




 ミーティアの本当の姿を、エイトの本当の心を取り戻す旅はまだ始まったばかり。。。





―――完―――






++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 まず、ここまで全て読んでくださってありがとうございます。
 読みづらい面も多々あったとおもいますが、何分素人ですので大目に見てくださると助かります。

 実はEDで主人公が座っている机の上に、呪いにかかっているとき兜が置いてあるのです。
 それを見てエイトがバンダナ巻いて旅立ちの決意をするシーンを妄想しました(笑)
 もっとも、机に置いてあった兜は回想シーンで主人公がかぶっていた兜とは形が違うんですけどね(^^ゞ

 そして今回の見所(?)の一つはミーティアが馬車を引く事になった理由です。
 親ばかトロデ王が自ら姫に馬車を引くように言うわけないし、もちろん主人公が提案するわけないと思っています。
 だとすれば、姫自らが。。。と言う事で今回の話に入れてみました。

 そしてラストですが、ヤンガスにはトロデ王感謝しています。
 あの2人なんだかんだで仲いいですよね♪
 ちなみに仲間パーティーはゼシカとククールには敵討ちと言う明確な旅の目的ありますが、ヤンガスって主人公に惚れ込んだだけでドルマゲス(ラプソーン)を追う理由ってないじゃないですか。
 そういう面で今作のパーティーで一番感謝しなくてはならないのはヤンガスなんじゃないかと思っています。
 もっとも主人公はともかくトロデ王はヤンガスにだけは、面と向かってありがとうとは言わないでしょうが(笑)

 5まではわざとやらなかった一人語りも色々ちりばめてみました。
 このシーンは主人公、トロデ王、ミーティアそれぞれ考え方が違うと思うので、このようにしたほうが良いと判断しました。
 読みにくかったらスイマセン(^^ゞ


 さて、これで「出会いから」は完結と言う事になりました。ED後、旅の間と色々私の中で話の妄想があふれかえってます(笑)
 それらの小説は近いうちにアップすると思いますが、すべて基本はこの「出会いから」です。
 単体でも読めるように書きますが、全て繋がった話と言う事になると思います。


 



小説目次へ

back
 






 

Photo by.空色地図 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送