「何しに来たんだい?」
 いつ訪ねてくるかもわからないヤンガスを待つために、ここ数ヶ月と言うもの世界をまたに架ける女盗賊ともあろう者が大半を自宅で過ごしていた。
 たまに何かの用事にかこつけてはヤンガスが住むパルミドに様子を見に行っていたくらいである。
 それほど待ち焦がれていたヤンガスの訪問だと言うのにゲルダはいつものように意地を張り見下すような問いかけをした。
 内心飛び上がるほど嬉しい。しかしそれをヤンガスに気付かれたくなかった。
 意地を張りキツイ言葉を吐くことで、どうにか自分の気持ちに自制をかけていた。
 そのことを良くわかっているお供の男は今のゲルダの言い方に笑いを堪えるのが必死のようである。



 「相変わらずつれねぇな。オレだって貴重な時間を割いてるんだけどな」
 ヤンガスはゲルダの前でだけ口調が変わる。
 旅の仲間、特に尊敬するエイトと居るときには自然と丁寧に遜っているのであるが、昔からライバルであり喧嘩仲間であったゲルダには素直な口調で話すのである。
 ククールなどはすかさず突っ込みを入れていたが、ゲルダに対する口調は誰がなんと言っても変えられなかった。

 「まあ今日は。そのあれだ」
 ゲルダに渡そうと持ってきたものを後ろに隠しながらどう切り出そうかとヤンガスは悩んでしまった。
 バレンタインデーに自分にチョコレートを渡してくれたときのゲルダは本当に可愛かった。
 ゲルダがどういう心境で自分にチョコレートをくれたのかはわからないが、今日は自分なりに全てをゲルダに告白しようとヤンガスは思っていた。
 「なんだい?私も忙しいんだ。さっさと用を言いなよ」
 このゲルダの言葉に覚悟を決めたのかヤンガスは素直に話し始める。
 「まずこれとこれ受け取ってくれないか?」
 そう言ってヤンガスが差し出したのは、エイトやククールと共に買ったネックレスの包みと一輪のバラの花だった。



 「私のために?」
 驚いたゲルダは虚勢を張るのも忘れて素っ頓狂な声を上げてしまった。
 「ああ。気に入るかどうかは分らないが、お前に似合うだろうと思って選んだんだ。受け取ってくれるか?」
 「・・・・・ありがとう。」
 自分の言葉に素直に応じ戸惑いながらも手を出すゲルダを見てヤンガスは驚いた
 ゲルダはああ見えても優しい女である事はヤンガスが一番分っている。一言二言の文句の後には必ず受け取ってくれると信じてはいたが、こうもいじらしく手を出してくれるとは予想していなかったのだ。



 「綺麗なネックレスだね。」
 ゲルダは包みを開けて誇らしげに言いながら、もらったばかりのネックレスをつけて見せた。
 「そう言ってくれるとありがたい。そんなに喜んでくれるとは思ってなかったよ。」
 ヤンガスは自分の正直な感想を口にする。
 「ふん。私が喜んじゃ悪いかい?」
 照れ隠しのようにゲルダはいつものように悪態をつきはじめる。
 そうは言ってないとヤンガスは苦笑いであった。





 「なぁゲルダ。オレはお前と居ると楽しいんだ。もし良ければオレとずっと一緒にいてくれないか?」
 ヤンガスは自然にそう言っていた。自然に出てきた言葉であったがために注意して聞かなければ聞き逃してしまいそうだった。
 「今なんて言った?」
 言葉自体は聞こえていた。
 それでもその言葉が信じられなかった。
 夢じゃないかと思った。
 自分の耳がおかしくなったのかとも思った。
 ゲルダはもう一度キチンと耳を澄ませて聞きたかった。
 もう一度言ってほしかった。



 「オレと結婚してくれないかと言ったんだ」



 改めて言葉に出してヤンガスは気恥ずかしくなったのかそれっきり黙ってしまった。
 しかしゲルダはさすがに今回は言葉の意味も理解できた。
 自分の思い過ごしじゃなかった。
 そのことが嬉しかった。
 素直に、本当に心の底から喜びが湧き上がってくるのが感覚的に分っていた。
 あまりの喜びと言う感情に言葉が出てこなかった。
 涙が出てきそうである。嬉しいときにも涙は出るものなのだとゲルダは初めて認識した。
 しばらくはお互いに無言であったが先に口を開いたのは問われていたゲルダであったのは当然の事だろう。



 「このネックレスとお揃いの指輪がほしい」



 「わかった」
 なぜかは自分でも分らないがヤンガスはこのプロポーズをゲルダは絶対に受け入れてくれると信じていた。
 数十秒の静寂の間でさえ落ち着いていられたのはそのせいであろう。
 婚約指輪はネックレスとお揃いのダイヤモンドで送りたいと考えていたところのゲルダの返事に意思を通じさせることができたような気がして嬉しかった。
 若い頃恋焦がれていたゲルダを一度は諦めた。
 しかしエイトたちと旅をして自分に自信が付いて気付いたらやはりゲルダは最高の女だと再び思い始めたのだ。





 「ねぇ。あんたの大事な兄貴に報告に行くんだろう?今度は私も行くからね」
 しばらく経った頃突然に言い出すゲルダの目はいつもヤンガスとともにありたいと願う女の瞳であった。
 ヤンガスと共に世界を旅してみるのも悪くない。ゲルダはそう思っていた。





 ―――好きだよ。ヤンガス。これから一生二人でお宝探そうね―――









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 どうもお待たせしました(^^ゞホワイトデーの話であるにもかかわらず現在は3月19日。。。
 遅れに遅れてごめんなさい〜〜〜!!!

 遅れた言い訳はしたくないのですが、少しだけ!←結局言い訳するのか私(笑)
 この話はラストをどうするか散々考えてたんです。
 プロポーズまで行くのか、その一歩手前までにするのかと言うことです(笑)
 主姫やククゼシはプロポーズとか入れるつもりは全然なかったんですけど。。。このカップルだけはどうしようかな〜?って(笑)
 主姫は正直な話、大聖堂から帰った直後に既にトロデ王が二人の結婚式の日取りとかさっさと決めてそうだし(笑)
 ククゼシのほうはマルチェロ問題が片付かない事にはどうにもなりませんので(苦笑)
 でもね、ヤンゲルって他カップリングに比べて周りに制約がないし、年齢も年齢だと思うので、今回で思いっきりプロポーズさせて見ました。

 ちなみに最後に入れた「一生二人でお宝探そうね」というゲルダさんの気持ちは私の中でこうであってほしいという願望です。
 この二人はラブラブとか言うよりもアツアツカップルにしたいです(笑)

 

 





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