「よう。久しぶりだな」
 「ククール!久しぶりだね」
 トロデーンの近衛隊長であり、城内公認の姫の恋人であるエイトは突然訪ねてきたかつての旅の仲間ククールを心底嬉しそうに迎える。





 「大聖堂での花嫁強奪以来だな。姫様とはよろしくやってるのか?」
 からかうようなククールのセリフにエイトは恥ずかしそうに顔を俯けはしたものの、その表情はククールでなくても幸せそのものとわかるような顔だった。
 「あ、あの時は本当に君には世話になったね。ありがとう。満足にお礼も言えないでいたから来てくれて嬉いよ。のんびりしてってよ」
 エイトはそこで一つ言葉を切り言いにくそうな表情になる。
 正直な話、今エイトはククールに相談できたら良いなと考えている事があった。まさにそんなときの訪問なので大げさにも神のお導きとすら感じていた。
 「なんだ?なんか悩み事か?」
 勘の鋭いククールはそんなエイトの様子に何があったのかと少々疑問に思い尋ねた。
 「いやその。。。悩み事って言うかちょうどククールに相談できたら良いなと思ってた事があったんだけど、でもやっぱり悪いからいいよ」
 旅の間からエイトは不平不満の類は一切言わなかったが、その変わり判断は早かった。言い澱んだりなどは一切なかったので始めてみるエイトのそんな姿にククールは心配が募り始める。
 しかし、そこは言葉巧みなククール。心配だなどと思ってることはおくびにも見せずに軽くエイトに声をかける。
 「言いかけた事をやめるのは健康に良くないぜ。悪いとかは思わなくても良い。俺もお前の知恵を借りにきたんだ。お互い様だから話せ」



 そんなククールの軽い口調にエイトは敵わないやと独り言のように笑顔でつぶやき覚悟を決めたように話し出す。
 「いや実はさ。えっとその。。。」
 なにやら真っ赤な顔して俯いてしまったエイトだが、度胸はいい。一気に話してしまおうと覚悟を決めたようだった。
 「実は姫にバレンタインに素敵な手作りのケーキを頂いたんだ。そのお返しに何を贈ろうか悩んでいてね。君ならいい案を考えてくれるんじゃないかと思って」
 照れてしまってもうそれ以上は言えないでいるエイト。すぐにククールからの突込みが入ると思っているのだが、相当呆れられたのかククールはしばらく無言だった。



 「ククール?」
 沈黙の時間が長すぎてしびれを切らしたエイトは自分が気に触る事でも言ったのかと思い不思議そうに尋ねる。
 そんなエイトの視線に気付いたククールは罰が悪そうに一言だけ口に出した。「おまえもか・・・」と



 「おまえもってことは君もなのか」
 端から聞けば全く意味も成さないような言葉を大きな目をさらに見開いて驚いた後エイトはつぶやく。
 「・・・・・わざわざこんなところまで足を運んで相談しに来たってのに同じ事を相談されるとは思ってなかったぜ。俺のガラじゃねぇ事を悩んだりするからかね。」
 さすがのククールも苦笑いだ。
 そんなククールを見てエイトは噴出してしまった。「失礼だぞ」と茶々を入れながらもククール自身も可笑しくてたまらなくなったのだろう。二人で腹を抱えて笑い出してしまった。

 「ククール、いつまでここにいられるの?今日、明日は大事な任務があるから動けないんだけど、その後なら陛下に頼んで1日休みをもらえると思うんだ。トラペッタにでも買い物に行かない?一人で悩むより二人で悩んだほうがいいもの見つかるかもしれない」
 ひとしきり笑い転げ、落ち着いた後のエイトの提案に全くだと言わんばかりにククールは両手を広げて答えてみせる。
 ククールは誰に渡すものなのかは一切口にしていないが間違いなくゼシカであることはエイトには分っている。
 女の子には慣れてるはずのククールがこれほどまでに悩むとは、どれだけククールにとってゼシカが大事な存在なのかがわかると言うものだ。
 エイトは自分の事は棚に上げて微笑ましく思っていた。





 「陛下。エイトです。今お時間よろしいでしょうか?」
 エイトは執務室でトロデ王と対面していた。
 「うん?多少忙しくてもおぬしの話なら聞くから遠慮などするでない」
 トロデ王は顔を上げ、いつもの茶目っ気たっぷりの表情で答える。
 「ありがたきお言葉にございます」
 エイトがサザンビーク王家の血を引き、トロデーンの至宝と呼ばれるミーティアと両想いであることは皆が知っている。それにも関わらずエイトのトロデ王への態度は臣下そのものであった。
 自らの身体に流れる血に自惚れることも天狗になる事もなく、昔から変わらぬエイトの態度はトロデ王にとって心強い事ではあるのだが、そろそろ「父上」とでも呼んでほしいと考えていることはエイトには知る由もなかった。
 トロデ王は苦笑いを浮かべながらもエイトに話の続きを促すようにあごをしゃくりあげて見せた。
 「実は今、ククールが城を訪ねてきております。それで、申し訳ないのですが共に買い物にでもと言う話になりまして、出来れば1日、他の兵と休みを交代させていただきたくお願いに上がりました。」
 トロデ王は昔からミーティアには弱い。しかし息子のように思っているエイトの頼みごとにも弱いのである。
 「おぬしの好きなようにして構わぬぞ。」
 「ありがたきお言葉感謝いたします。」
 しばらくの雑談の後、礼をして立ち去ろうとするエイトの背に思いがけない独り言のようなトロデ王の言葉がかかる。
 「ミーティアには瞳の色と同じ宝石が似合いそうじゃのぉ」



 廊下に出たエイトは自分が何のためにわがままを言って休みを交代してもらうつもりなのか、トロデ王にはすっかりお見通しだったのを悟り人知れず苦笑いをしていた。
 しかし、その助言というか気遣いは今のエイトにとっては大変嬉しかったのは言うまでもない。





 「兄貴、お久しぶりでガス」
 「ヤンガス!どうしたの?久しぶりだね」
 ククールがトロデーンに訪ねてきた翌日、今度はヤンガスもやってきた。

 「兄貴がお元気かどうか、無性にお会いしたくなったでゲス。お変わりなさそうでアッシは嬉しいでガスよ。」
 心底エイトを信仰しているかのようなヤンガスはエイトの姿を見て目を細めている。
 「あはは。オレもヤンガスが元気そうにしていてくれて嬉しいよ。実は今偶然にもククールも来てるんだ。」
 エイトの言葉にヤンガスは驚く。何ヶ月ぶりかで訪ねたと言うのにまさかククールにも会えるとは思っていなかったのであろう。
 「そうでがすか。それは驚きでがす。しかし、ククールに会う前に兄貴に一つ相談に乗ってほしい事があるんでゲス」



 そういって珍しく口ごもるヤンガスにエイトは鋭く勘が働いた。
 「まさかと思うけど、ゲルダさんへのプレゼントはどんなものがいいか聞きに来たとか言う?」
 あくまで勘である。あくまで勘なのだがなぜだかエイトには自信があった。
 案の定ヤンガスは何で分るのかと言うように大きな身体いっぱいで驚いて見せた。
 「兄貴には敵わないでがすな。全くそのとおりでげす。兄貴の聡明なお知恵を貸していただきたくてやってきたでげす」
 エイト、ヤンガス、ククールの3人は性格も容姿も育った環境も全く違う。にもかかわらず全く同じ事で揃って悩んでいると知ってエイトは可笑しくてたまらなかった。
 「明日、トラペッタにククールと買い物に行こうと思ってるんだけど、一緒に行かない?一人より二人、二人より三人で悩んだほうが良い物見つかりそうだ。」
 「は?三人?」いかにも可笑しそうに自分を誘うエイトにヤンガスはわけが分らず素っ頓狂な声を出して尋ねた。



 「ククールもオレもヤンガスと一緒だよ。違うのは相手がゲルダさんじゃなくて、ゼシカか姫かと言う事だけだよ」
 長い間、共に旅をして自分達は似てしまったのだろうかとエイトは心の中で思っていた。









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 ホワイトデーを目の前にして、うちのドラクエ8男性陣をヘタレにしてしまった(笑)
 どいつもこいつも良い悩みっぷりですね(笑)
 もっとも女性陣は全員、どんなものでも愛があれば大喜びすると思うんですけどね〜♪
 ゲルダさんとゼシカは素直じゃないかもしれないけど(笑)

 で、バレンタインのときにホワイトデーでも続きを書きますと掲示板で数名の方に言ったのですが、これがその続きと言うことになります。
 バレンタインの時には主姫でしか小説書いてないんですが、ゼシカもゲルダもしっかりチョコレートを上げていたということです(笑)
 そしてこの話は全3話です。2話目は3人でお買い物編(笑)3話目はホワイトデー当日編と言う事になります。
 ただホワイトデー当日編は、主姫、ククゼシ、ヤンゲルと別々に書く予定ですので結局は5話と言ったほうが良いかもしれませんね(笑)

 一応、ホワイトデーまでには全ての話書き上げる予定ではいますが、間に合わない可能性も(^^ゞ

 ところで私って、どうしてもトロデ王を良い人にしてしまう癖があるらしい(笑)





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