「うん???あれ???」
 「おぉぉぉ。気づいたか。良くぞ戻ってきたエイトよ。ここは不思議な泉じゃよ。」
 泣き笑いを浮かべながらグルーノはエイトを抱きしめた。
 「ミーティアは?」
 「精神世界から戻ってきた影響でまだ気を失っているがなんともない。安心しなさい。」
 エイトははっと気づきグルーノに尋ねるが答えたのは意外にも竜神王だった。
 「竜神王さま。」
 なぜここに竜神王がいるのか激しい疑問にエイトは襲われた。
 「そう驚くでない。竜の血の捨て方を教えたのはこの私だ。そしておまえはミーティア姫と共にその役目を果たしたようだな。そなたほどの強さを持つものが竜の血を捨て去ることは正直私としては惜しい気もするが、そなたにとってはこれが一番良かったのであろう。」
 そう言う竜神王は満足げにうなずき自分の役目は終わったとばかりに去っていった。



 まだ自分を抱きしめているグルーノに苦笑いを浮かべながらもエイトはそのままにして、ゆっくり語り始めた。
 「お祖父さん、竜の血を捨ててしまったことごめんなさい。」
 なにか言いたげにエイトを見上げるグルーノの言葉を制しエイトは静かに続ける。
 「精神世界で父と母に会いました。オレのことが心配でずっとオレの精神世界にいてくれたそうです。もっともオレの竜の血がなくなれば精神世界にとどまることは出来ないようで、旅立ってしまったのですが・・・」
 しっかりとエイトの言葉を聞きたかったのかグルーノはやっとエイトから離れた。そんなグルーノの姿にくすっと小さく笑いエイトは続けた。
 「父にも母にも初めて会って、初めて抱きしめてもらいました。とても暖かくて、この人たちの息子に生まれられて良かったと素直にそう思うことが出来ました。」
 グルーノはそれだけ聞くと満足したように頷いた。






 「戻ったか。して具合はどうなのだ?」
 エイト一行がサザンビーク城に戻ると待ちかねたようなグラビウス王の姿があった。そのグラビウス王の瞳は心配というよりは不安におびえるように揺れていた。それをいち早く察したエイトは社交辞令のような軽い挨拶の後、早速本題に入った。
 「城下であのような騒ぎを起こしてしまい申し訳ありません。私があのような竜になることは金輪際無いと誓えますが、国民のみなさまを恐れさせてしまった罪は重くございます。かくなるうえは・・・」
 「やめて!」エイトが最後まで言わぬうちにミーティアがその言葉を遮る。
 「エイトはまぎれもなくサザンビークの国民を救いました。グラビウス王、そうでございましょう?」
 「たしかにそうだな。しかし、私が嘆いているのはそんなことではないのです。ミーティア姫。実はあまり大きな声では言えぬが・・・そなた達には心より詫びても済まされないことがある。」
 不思議そうな顔をするミーティアを尻目にグラビウスは思い切って話してしまおうと意を決したように再び口を開く。
 「実はあの化物をこの世に呼び出したのはチャゴスなのだ。」
 心底苦々しいと言わんばかりのグラビウスにミーティアは絶句して驚きをあらわにしたが、エイトのほうは平然としたものであった。
 「わかっていたのか?」グラビウス王がエイトに尋ねる。
 エイトは寂しそうな笑顔で静かにその問いに答えだした。
 「えぇなんとなくですけれど。だからこそ私を罰してほしいのです。私は大聖堂でチャゴス王子に恥をかかせてしまいました。その私を王子がお恨みになるのは自然の原理。やり方は確かに突拍子もないことでしたが、王子のお気持ちは分かります。」
 驚きに沈黙するグラビウス王にエイトはさらに続けて説明をし始める。
 「別にサザンビークのために申しているわけではございません。今後サザンビークがチャゴス王子の代になったときにトロデーンが恨まれていては困るのです。それだけです。ですから私の頼みを受け入れてくださいませんか?」
 なんと出来た男であろうか。グラビウスは驚きと共に感嘆で舌を巻く。
 しばしの沈黙の後、グラビウスが寂しげな笑顔と共に語り始めた。
 「サザンビークは本当にすばらしい人物を他国にやってしまったものだな。そなたをサザンビーク王家の血族から除外するという通達を出そう。そなたには何から何まで世話になり本当に申し訳がない。」
 呆然とするミーティアを尻目にエイトはそれでよいとばかりに満足げにうなずいた。





 「ミーティア。オレと結婚してほしい。」
 サザンビークからトロデーンへの船上、突如、それでいてしっかりとした口調でエイトはそう語った。
 「オレはサザンビーク王家から除外された。父も母も自分の中から去っていった。だから何一つ持っていない。だけど君のそばにいたい。いさせてほしい」
 夢の世界でも言ったことの繰り返しだ。それでも現実と言うこの世界で言いたかったのだろう。エイトは易しい声音で言っているものの瞳そのものは不安と期待で入り乱れているかのようだった。
 ミーティアは自分のそばにいてくれるという確信こそあるものの現実世界でミーティアの口から返事が聞きたかったのだ。
 長い間、ずっと傍にいたミーティアはそのエイトの気持ちも全て分かっている。
 ミーティアとて同じ気持ちだったから・・・。
 「もちろんです。それはこちらからお願いしたいくらいです。ありがとう。エイト。おじいちゃんになっても、おばあちゃんになってもあなたの傍にいます。いつも」
 そう言い切るミーティアの瞳は笑みを浮かべるだけで涙は無い。いままでエイトを思い何度も泣いた。しかし今は涙はいらない。







 「エイト、わしはそなたに言いたいことがある。」
 「・・・なんでしょうか?」
 トロデーンに帰ったエイトとミーティアはしばらくの後トロデ王に呼ばれた。
 そしていつに無く真剣なトロデ王の表情と口調に出会ったのだった。

 「ワシはな。そなた達がサザンビークより戻ったらすぐに結婚式をしようと思っておったのだ。と言うことで来月に決めたぞ」
 あまりの急さに呆ける二人をよそに実に楽しそうにトロデ王は目を輝かす。
 「心の準備が・・・」などとぼそぼそとつぶやくエイトの言葉は完全無視でトロデは早速大臣を呼び日程や招待客の準備を進めるように命を出す。
 「それと結婚式終了後、すぐにワシは退位するからそのつもりでおるのじゃぞ」





 「あのさミーティア。陛下がさっきおっしゃてたのってどういう意味???」
 いっそ情けないほどの質問であることはエイト自身もわかっている。しかしあまりの衝撃に問わずにいられなかった。
 「どういうと言われても・・・。エイトに王位を譲ると言うことでしょうね」
 エイト自身その意味を分かった上での質問であろうと察しているので、答えるミーティアのほうは苦笑いだ。
 父王の突拍子のないわがままには慣れてはいるものの、今回はさすがに国を左右することであるためにそう簡単に決めてよいものかどうか。
 とは言え、父王のわがままを止められることの出来る唯一の人物である大臣までもが笑顔で話を聞いていたのだから、もうこの話は決まったも同然なのである。

 「だけど・・・」などと珍しくぶつぶつと悩んでいるエイトを微笑ましく思いつつ、ミーティアは口を開いた。
 「大丈夫よ。エイトなら良い王様になれるわ。もちろん出来る限りのことはミーティアもやりますし、お父様も大臣も協力してくれるはずよ。」
 それはさすが親子とエイトが飽きれるほど、トロデ王と同じくらい、いやそれ以上の軽いのりだった。









 ―――まぁいいか。ミーティアと一緒にいられるなら、お安い御用だよね―――

 心の中でこんなことを考えるエイトは、数年後にはトロデーン王にふさわしい朗らかさを持った立派な王となるのだった。





―――完―――







++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 ベタだ・・・ベタ過ぎる・・・はうぅぅぅ・・・ごめんなさい。あまりにベタ過ぎて穴があったら入りたいほど恥ずかしい(^^ゞ
 でもこれしか完結方法が思いつかなかったの・・・もうね・・・先の展開が思いつかない重症だった・・・(^^ゞ
 本気でベタというか分けわかんなくて申し訳なく思いつつ、この「未来へ」を未完のままおいておくのがずっと気になってて。
 だって、前回から・・・5ヶ月だよ5ヶ月!続き物をここまで書かないのはどうよ!?自分!
 もう・・・明らかに無理やり完結させました〜!って感じで申しわけない・・・あまり言い訳はしたくないけど、今回ばかりはお詫びを並べさせていただきます。

 突込みどころは満載だと思います。
 チャゴスはこんな感じでいいのか?とか・・・6話とつじつま微妙にあってないとか・・・書いてる本人結構気にしてますです・・・
 最終的にただただ主姫が一緒にいたいという気持ちしか出てこない薄っぺらい物でしかなくなってしまったことも重ねてお詫びしますm(_ _)m





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Photo by.空色地図

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