「あ〜さっぱりした」
 なんとも晴れ晴れした表情でゼシカが言いながら伸びをした。
 「エイトも姫さんもいいだけイライラさせてくれたけど、収まるところに収まったって感じだな」
 悪態はついているもののククールも正直ゼシカと同じ気持ちであった。



 サヴェッラ大聖堂でチャゴスとミーティア姫の結婚式を旅の仲間でぶち壊してからまだ数時間。
 2人ともまだ興奮冷めやらぬといった状態で、宿屋にいた。
 ヤンガスはしばらくはエイトとミーティア二人だけ、というかトロデ王とトーポと身内だけにしておいてやれと言ったにも関わらず、感激しまくって結局後を追いかけて行ってしまった。
 もろに感動しているゼシカと、表面上は普通を装ってはいたものの内心興奮状態のククールはすぐに旅立つ気も失せて、もう一晩サヴェッラ大聖堂に宿を取る事に決めた。



 「エイトと姫さんのとろけた顔は傑作だったぜ。あとでからかってやんないとダメだな」ククールはそれが楽しみといわんばかりににやついている。
 「やめさないよ。素直に祝福してあげたほうが絶対にいいわよ」咎めるゼシカの口調はかなりキツイ。
 「それよりハニー。どうだい?俺たちも少しはよろしくしないか?」相変わらずふざけた口調のククールであったが、その実、手が微妙に震えていた事はゼシカは知らなかった。
 「なに言ってんのよ?トロデーンまで連れてきた女の子達とよろしくすればいいじゃない。ほんっとあんたならデリカシーのかけらもないわね。」
 ククールのセリフにゼシカはいつものごとく一瞥を下す。
 「あの子達は勝手についてきただけでオレの本命はゼシカだよ。」
 そこでいったん言葉を切り、思い切ったようにククールは続ける。
 「前にエイトと姫様くっつけよう大作戦を成功させなきゃならない理由がもう一つあるって言っただろう?それはゼシカとエイトがくっ付いてもらっちゃ困るってことさ。」
 ククールにとっては一世一代の大告白である。ゼシカはいつもとはまるで違い真面目な表情のククールに胸の鼓動が早くなっていた。それでも普段のククールの行いが悪すぎたらしく到底ゼシカは信じていなかった。
 「な、な、なに言ってんのよ。冗談も大概に・・・」しかしそこでゼシカの言葉はククールの唇によりさえぎられた。
 ゼシカは自分の頭が真っ白になったような気がした。今ククールは自分に何をしているのだろう?それが分った瞬間に何より先に手が出ていた。



 バチ〜〜〜〜〜〜ン!!!
 ククールの端正な顔に思いっきり手のひらの後が付くぐらい力を込めて平手打ちしていた。
 そしてククールをきっと睨んだ後、苦しいのか嬉しいのか、はたまた悲しいのか分らないような感情が押し寄せてくる。
 さすがのククールもあまりの衝撃に言葉を失っている。
 ククールが我に返ったときにはその場にゼシカの姿はなかった。
 ゼシカは自分がいたたまれなくなって外に勢いよく飛び出したのだ。





 外に出たゼシカは行く宛てもなくとぼとぼ歩きながらぼんやりと考えていた。
 ククールは自分にキスをした。
 でもククールは部類の女好きで、女なら誰でもいいのだ。
 そう考えてなぜか涙があふれてきている事に気付く。
 なんで?
 あんなふざけた女好きのために泣かなきゃいけないのよ???



 それでもとめどなく流れる涙を止める事は出来なかった。
 ゼシカとて子供ではない。この感情がなんであるかは薄々気付いている。
 前にククールに聞かれたことがある。。。
 「エイトが好きなんだろう?」って。。。
 エイトの事は大好きだ。エイトはゼシカの大好きなサーベルト兄さんに似ていた。
 顔形ももちろんなのだが雰囲気と言うか、いつも物腰がやさしくて、どんな事でも出来て賢くて強くて。。。
 ゼシカはエイトに兄の面影を見ていた。それは本人も気付いている。だから恋愛感情などではない。



 悔しい悔しいよ。。。どうしてあんな女好きのちゃらちゃらした奴の顔が目に焼きついて離れないのよ。
 でもあいつ、本当はすごく寂しがり屋でもろくって。。。それを隠すために強がってるんだよね。
 先ほどククールのキスされた唇を恐る恐る手で触る。
 まるで、そこから熱を持っているかのようだった。
 この感情がなにかはわかっている。だから苦しい。
 あいつの唇が触るのは自分だけだったらどんなにか嬉しいか。。。ありえないこと思いながらもゼシカは願わずにいられなかった。





 自分とした事が明らかなまでに急ぎすぎた。
 ククールは懺悔にも似た衝動に駆られ舌打ちする。
 「チクショー。これじゃエイトのこと笑えねぇじゃん。」
 他の女笑らせるのは簡単なのにどうしてもゼシカだけは笑わせる事ができない。
 それどころかかっこ悪いところばかり見られているような気がしていた。





 夕暮れ時の景色をぼんやり眺めていたゼシカの耳に足音が聞こえる。
 それが誰の足音であるかすぐに分る自分がゼシカはすごく悔しかった。
 だから気付いていないふりをした。自分がククールに夢中なのを本人に悟られたくはない。
 「ゼシカ。」いつもより少しだけ緊張を含んだ声でククールは名前を読んだ。
 それでもとことん振り向かないつもりであろうゼシカにククールは振り向かせる事はあきらめ話しかける。
 「さっきは悪かったよ。でも言った事もしちまったことも俺は後悔はしちゃいない。信じられないならそれでいいが、さっき言ったことは本気だぜ。頭の片隅にでも置いておいてくれ」
 最後のほうは、普段ではありえないくらい憂いを秘めていて何を言われようと無言を決め込んでいたゼシカもつい言葉を発してしまう。
 「・・・・・あんたがもう二度と女の子を誘ったりしなければ信じる。」
 ククールの顔がまさにおもちゃを与えられた子供のようにパッと輝いた。
 「ゼシカが信じてくれるなら、もうしない。神に誓ってもいい」
 「神なんか信じてないくせに。」
 ククールの誓いにふてくされたように反論しながらも神にも誓うと言うククールの言葉に心が躍るのをゼシカは感じていた。それでもすぐには素直にはなれないのはゼシカの持つ気の強さなのだろう。
 「しばらくはあんたを観察させてもらうわよ」
 それだけ言うと、ゼシカは立ち上がりククールをチラッとにらめ付けさっさと宿に帰ってしまった。



 しばらく観察されると言う事はそのしばらくの間は一緒に居てもいいって事だよな。とククールは勝手に解釈していた。
 脈はある。これからの自分の行動次第なんだと珍しくも大真面目に考えていた。







++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 ごめんなさい。。。書いてるうちになにがなんだか分らなくなってきました。。。
 支離滅裂。

 別名「数ヶ月のとき番外編」
 他のカップルたちに比べて、なんて喧嘩が多いカップルなんでしょう(笑)
 だってさ、主姫はほのぼので喧嘩なんてしないだろうし、ヤンゲルはあきらかにヤンガスが尻に敷かれるだろうし(^^ゞ
 この2つに比べるのが間違ってるかもしれないけど(笑)











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