バーン!
 今まさにサザンビーク王子チャゴスとトロデーン姫ミーティアの婚儀が行われようとしていたとき、入り口から大きな音が響き渡った。
 後日、参列者からまるでまぶしい太陽の光が入ってきたといわれる事になる出来事である。



 「エイト」
 一様に驚く式場の面々の中で一番に口を開いたのは、ほかならぬミーティア姫だった。
 「ミーティア行こう。」
 エイトの放った言葉は短く、たった一言であったが、ミーティアにはそれで十分だった。
 自らに差し出された手を、まるで条件反射のように取っていた。



 そんな二人を参列者たちは暖かく見守った。
 参列者の多くは、あの旅の間にエイトたちに世話になった者が多く、一行のリーダーであったエイトには皆感謝の念でいっぱいだったのである。

 ただ一人チャゴスを除いては。。。
 「ミーティア姫、そのような下賎の者の手など取られてはなりません。騎士ども早くこの輩をたたき出せ。」
 チャゴスとて他の参列者同様、いやそれ以上にエイトたちには世話になっている。
 それにもかかわらず下賎扱いするチャゴスを咎めたのは、ほかならぬグラビウス王であった。
 「花嫁を取り返したければ人に頼らず自分で取り返せ」
 今までチャゴスには甘かったグラビウス王も今回ばかりは厳しかった。
 そこで言い訳を始めたチャゴスに、ほとほとあきれ返ったのかグラビウス王はがっくりと肩を落とす。
 「そなたはいつもそうだな。自分では何もせずに人を使って解決しようとする。そなたにはまだまだ婚儀は早いようだ。」
 まだ言い訳をしようとしているチャゴスを無視してグラビウス王はトロデ王に歩み寄った。
 「そういうわけで、勝手を言って申し訳ないのですが、この婚儀はなかった事にしていただきたい。」
 あまりに願ったり叶ったりな話の成り行きに、さすがのトロデ王も夢でも見ている気分であったのか呆けてしまっている。



 「エイト。我が兄の子よ。ワシの気持ちが変わらぬうちに早くトロデーンに帰られると良い」
 このグラビウス王の言葉にエイトは驚いた。もちろんエイトだけではなくその場にいたもの全員が驚いたわけであるが、エイト自身の比ではなかった。
 昨晩の話とは一転している。エイトが驚くのも無理はない。
 ミーティアが呆然とエイトを見つめているのに気付き、とっさにごめんと謝ったがエイト自身グラビウス王の心境の変化について行く事ができずにいた。。
 グラビウス王が兄の子と口に出した事で、エイトをサザンビーク王家の血を引く者と世に認めたことになるのだから。
 「グラビウス王。エルトリオ殿の忘れ形見、この後も我がトロデーンで預からせていただいてよろしいかの?」
 やっと我に返ったトロデ王はグラビウス王に問う。それはサザンビーク内で争いが起きぬ様にというトロデ王の配慮でもあった。
 エイトの意思でサザンビークに行く事はないという事はトロデ王には分っている。しかしチャゴスを好ましく思わない者たちがエイトを担ぎ上げて争うことへの懸念だった。
 「さあ、今度こそ行くが良い」満足そうに頷いたグラビウス王はエイトとミーティアの背中を押した。





 式場の外に出たエイトに、仲間達の顔が映る。
 ヤンガスとゼシカは、感極まって目に涙を浮かべているようだった。
 そんな大事な仲間に近づこうとしたエイトにククールはいいから早く行けと言わんばかりに手をふった。
 その気遣いが嬉しくてエイトは手を振り返しながら、ミーティアを連れて大聖堂を後にした。





 「エイト。先ほどの話は本当なの?」ミーティアがおずおずと尋ねる。
 「だまっててごめん。本当は誰にも言うつもりなかったんだけど、成り行き上グラビウス王に明かさざる得なくなっちゃって。こんなオレだけどトロデーンに居て良いかな?」
 そういうエイトは心底すまなそうな顔をしている。
 「エイトがどこの誰でもミーティアは構いません。エイトがミーティアの傍に居てくれるだけでいいのです。ただ少し驚いただけよ。」
 「ありがとうミーティア」
 10年以上も前から一緒にいた二人は、今まさに結ばれた。
 二人が出会ったのは運命なのか偶然なのかは分らない。しかし、二人にとっては祖父母の頃からの約束などどうでもよかった。
 今二人でいられることが、例えようもないほど幸せだったのである。





 「ところでお主らワシがいる事忘れておらんか?」まるっきり拗ねてしまったような声でトロデ王が嘆く。
 「陛下!」「お父様!」
 同時に叫ぶエイトとミーティアは互いに顔を見合わせながら苦笑いをする。
 「まあ良い。さあトロデーンへ帰るぞ。」
 いつの間に用意したのか、トロデ王の傍らには馬車があった。
 そしてトロデ王は迷わず御者台に向かう。
 「陛下。中へお入り下さい。私が・・・」焦るエイトであったがトロデ王は最後まで言わせなかった。
 「ええい。ワシは御者台のほうが落ち着くんじゃ。それにミーティアはワシよりエイトが一緒のほうがよさそうだしな」
 拗ねたような口ぶりではあったが、茶目っ気たっぷりにウィンクして見せるところがなんともトロデ王らしかった。
 そんなトロデ王に同意したのか、エイトのポケットに納まっていたトーポまで御者台に行ってしまった。
 そこで覚悟を決めたのかエイトは馬車の扉をあけ、ミーティアを通し続いて自分も中へと入った。





 トロデーンへ向かうまでの間、エイトとミーティアがどのような会話をしたかは本人達しか分らない。
 しかし御者台に避難したトーポこと祖父グルーノの判断が正しかったことは言うまでもないのであった。





―――完―――







++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 最初に言った事を守れずどんどん長くなる話に付き合ってくださりありがとうございました<m(__)m>
 これで数ヶ月のとき完結です。
 とは言っても実は番外編としてククゼシで実はもう1本あります(笑)
 ↑数ヶ月のときずいぶんと引っ張るな〜!とか突っ込まれそうですね(笑)

 ちなみにこの最終話は少し悩んだのですが、真EDと一回目のEDを混ぜ合わせたような終わり方にしてみました。
 私の中ではこの二人の結婚式はトロデーンで城のみんなに祝福されてやらせてあげたいんです。
 もちろんヤンガス、ククール、ゼシカも呼んで♪
 ま〜その話はまた今度、書かせてもらうつもりです。
 ↑しつこいと言われ様と主姫小説は書きます(笑)

 しかし、最終話一番めだったのはグラビウス王じゃん!!!
 ゲーム中での1回目のEDなどはその後サザンビークとトロデーンは仲が悪くなるのじゃないか?とか思うような感じもしないでもなかった。
 真EDのほうは大丈夫でしょうが(^^ゞ
 なので、この後も両国が友好な関係を保てるように両王が互いに気を遣う場面を入れてみました。











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Photo by.空色地図

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