「突然だが俺たちは今日、ここを出る事にした。いつまでも世話になってるわけにもいかねえしな」
 エイト一行がラプソーンを倒して1週間がたった。その間、宴だ祝いだと4人は大忙しであったが、それも少しずつ納まりつつありククールが言い出した。



 「そっか、寂しくなるけど仕方ないよね。みんなはこれからどうするの?」
 ククールの突然と言う言葉に反し、そろそろみんなトロデーンから旅だってしまうと言う事が分っていたエイトは落ち着いた表情で尋ねる。
 「私はリーザスの村に帰るわ。二度と帰らないつもりだったけど、母さんの事も心配だし」
 出会った頃は猪突猛進で母親と喧嘩ばかりだったゼシカもこの旅を通じて成長したようだ。
 「アッシは兄貴のお傍においてもらおうと思ってたげすが、アッシには城の雰囲気が似合わないでがす。パルミド近辺に戻ろうかと思ってるでがす。山賊に戻るつもりはないでがすがな」そう言うヤンガスは苦笑いだ。
 「そっか。ゲルダさんによろしくね。」珍しくいたずらっ子のような表情でエイトは返す。
 「なんで、そこでゲルダが出てくるでがすか?」ヤンガスは大慌て。
 「ま。いいじゃねえか。俺はあてはねえが、ふらふらかわいこちゃん探しの旅でもするよ。」
 エイトはそう言ったククールに素直じゃないなと肩をすぼめて見せる。ククールがゼシカの事が好きなのはエイトは気付いている。本気の恋には意外に奥手なククールに少々驚いたりもする。
 「わかったよ。みんな気をつけて。たまにはトロデーンにも遊びに来てくれな。陛下も姫もお喜びになるだろうから」

 「そっちこそ姫さんとよろしくやれよ」
 そんなククールのセリフにヤンガスもゼシカも笑顔を浮かべたところを見ると自分の本音を全員知っているんだと、エイトは悟った。
 城にいたころはうまく隠せていたと思っていたのに・・・
 もっともトロデ王やミーティア本人の手前、誰一人今まで口にしなかったことであるが、大分前から全員が知るところだったことをエイトは気付いていなかった。
 「・・・何を言ってるんだが」そう返すのがエイトにとっては精一杯。



 「で、王様や姫様にはおまえの出生の事、本当に言うつもりないのか?」
 急に真面目な顔で言うククールだがエイトは何一つ変化はなかった。
 竜神族の里へは、その場のあまりの地形の悪さからトロデ王もミーティアも行ってはいないのでグルーノの話は2人は聞いてはいない。
 出生の秘密を聞いた翌日にエイトから、トロデ王やミーティアには言わないでほしいと懇願されていた。
 その決意に今も変わりはないのか、とククールは聞きたいらしい。
 「言わないよ。オレの故郷も居場所もトロデーンだけだから。陛下や姫に余計な考え事してほしくないし、それに・・・」
 言葉に詰まったまま俯いたエイトにククールは続きを促すように視線を送る。
 「竜神族の里にもサザンビークにも俺の居場所はないし、行きたいとも思わない。なのに陛下や姫に話して・・・・・もし・・・・・」
 再び言葉に詰まるエイトの顔は悲痛に満ち溢れていた。
 つまりエイトはトロデ王やミーティアに全てを話してしまうと、トロデーンを追い出されるのではないか?と、それを心配しているのである。
 「そんなことないわよ。絶対」
 そんなエイトを見てゼシカは叫ぶような口調で言う。
 「王様だって姫様だってエイトのことすごく大事に思ってるわ。あなたがどこの誰であろうと関係ないって言うに決まってる。」
 言い終わった後、感極まったのかゼシカはぽろぽろと涙をこぼす。
 「ごめん。ゼシカ。本当にごめん。オレは大丈夫だから、泣かないで。ね?」
 いつも冷静で落ち着いているエイトもさすがに女性の涙には弱いらしく、大慌て。



 「うだうだ言っても別れ難くなるだけだ。そろそろ出発しようぜ」
 エイトに責任はないが、ゼシカが泣いてる原因がエイトにある以上ククールは面白くないのか、ぶっきらぼうに一言告げた。
 「そうでがすな。兄貴、くれぐれもお身体に気をつけてくだせい。なにかアッシでお役に立てることがありやしたら、いつでも飛んでくるでがす。」
 「最後にみっとも無いとこ見せてごめん。何かあったら私も飛んでくるからね。」
 ヤンガスとゼシカのセリフに本当に仲間って素敵だとしみじみエイトは思いながら、はっと気が付いて言葉にする。
 「あっ。待って。陛下や姫にも一応挨拶して行ってほしいんだけど」
 「それなら、ここに来る前にしてきたから大丈夫だ。気にするな。」
 ククールにしては気の利いた事をするものだとエイトは思う。





 「行ってしもうたのか?」
 エイトが3人を城門まで送り城内に帰ってきたところでトロデ王とミーティアが待っていた。
 「陛下。姫も。もしや私を待っていて下さいましたのでしょうか?」
 そんなエイトの言葉にかすかにそして優雅に微笑んで頷くミーティア。
 「恐れ多くございます。」膝を付き礼をする。
 「かしこまらなくても良いぞ。が、明日からトロデーンは通常に戻ろうと思う。そなたもそれ相応の仕事をしてもらうから覚悟しておくが良い。」
 昔からトロデ王の言葉には有無を言わせぬものがある。わがままとも言うのであろうが、こういう強引さがトロデーンを支えてきた。
 「じゃが、今日はユックリすると良い。ミーティアもな。」
 そういうトロデ王は茶目っ気たっぷりにウインクまでしてみせる。
 いつもミーティアやエイトを気にかけているトロデ王は、2人の気持ちを良く分っていた。と言うよりもエイトの気持ちはともかくミーティアの気持ちは誰が見ても非を見るより明らかであったのだが。トロデ王もそれでいてこのセリフが出るということは実のところ懐が深い人物なのであろう。







 「エルトリオ王子の息子か・・・」
 自室に戻り一人になったトロデ王は数刻前にククールに聞いた真実をつぶやく。



 ククールはエイトに別れを告げる前に、トロデ王にエイトの出生の秘密を明かしていた。
 口止めされていたとは言え、ククールなりに考えた最善の方法との事だった。
 「うまく事を運べないものかね?王様とてチャゴスなんかに姫様やるのはいやだろうよ。」とククールは捨てセリフのような言葉を吐いて去って行った。
 トロデ王とて言われるまでもなくチャゴスなんぞに、可愛い姫をやりたいなどと思っていない。
 しかし、国と国との約束はそんな簡単なものではない。特に今、呪いから解けたばかりで諸外国からの援助が必要不可欠な状態なのだからなおさらだ。


 サザンビークの元第1王子のエルトリオには実際トロデ王は会った事がある。
 昔、犬猿の仲といわれていた両国の国交正常化記念のパーティーで若き日のエルトリオにはかなりの好感を持っていた。
 しかし、そのエルトリオが愛した女性を追いかけて失踪したと知ったときには絶望したものだ。第一王子たるもの簡単に国を捨てていいものかと怒りすら覚えていたのである。
 エルトリオ王子の弟で現サザンビーク王のグラビウスも同じように考えていたのか、王就任時に行われたパーティーで「兄の事は忘れました」と一言だけトロデ王に語っていた。それからと言うものグラビウスの口からエルトリオの事が語られる事はなかったのかもしれない。
 エルトリオが生まれたときから持っていた権利は今では全てグラビウスにある。
 エルトリオの息子がいると分ったところで、グラビウスがエルトリオの息子を認知するとは考えられなかった。それどころか頑なに縁談を進める恐れもある。



 ククールよ。そなたの言いたいことも考えてる事も良く分るが、ワシにどうしろと言うのじゃ。
 中庭で楽しそうに会話する二人を困ったように眺めながら思う。



 ―――エイトもミーティアも不憫すぎるのぉ。。。―――









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 はい、EDにあった、たった1行の話です。
 ―――数ヵ月後―――
 って奴ですね(笑)

 実はweb拍手やメールでED後というリクエストを数名から頂いてたんですが、先にED中のこっちの話を固めないと書けないと気づきました(^^ゞ
 私の頭の中ではある程度の設定は出来ているので、ED後もちゃっかりトライしたんですけどね(苦笑)
 リクエストくださった方々本当にスイマセン(^^ゞ
 さっさと、この話を書いてしまいますので、もう少しお待ちください(^^ゞ

 で、今回の話なんですが。。。
 トロデ王とミーティアはエイト君の意思のもと、出生の秘密は知らされないという話しに持って行きました。
 だって、ゲーム中でも竜神の里での話ってトロデ王からもミーティアからも聞けないので。。。
 ↑実は姫から「エイトがサザンビーク王家の血を引いていたなんて!」と言う話が聞ける事を私は期待していた(笑)
 なので、2人が何も言わない=知らないという事で間違いないだろうと(笑)
 ま〜私の設定ではククールがあっさりばらしてますけど(^^ゞ

 この「数ヶ月のとき」は一応全3回か4回になると思います。お付き合いくださると嬉しいです。
 それにしても私ってタイトル考える本当に苦手です。。。
 もう少し、ひねりのあるタイトル付けられないのかといつも思う(^^ゞ







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