「綺麗な桜ね」
 聖O男ジャックと桜並木を並んで歩きながら、感慨深げにメリー天使が呟いた。
 「・・・・・そうだな」
 そう短く答える男ジャックはとても複雑な表情で、寂しいのか悲しいのか嬉しいのか本人すら分かっていないようだった。



 二人の故郷、聖遊源は豆の木が有名であるが、そのほかにも四季折々で色々な木が花を咲かす。
 例外なく春には桃色の綺麗な桜が咲き、その桜の木の下でお弁当やお菓子を食べて騒ぐのが好きだった。
 聖遊源の桜に引けを取らぬ華麗さを、今眺める次界の桜も持ち合わせているようだ。



 「この桜を守らなければならねぇんだな。」
 意を決したような男ジャックの小さな呟きにメリー天使は泣きそうな気分で、それでもしっかり頷いた。
 故郷で加護を受け、この次界に呼ばれたとき一抹の不安がよぎった。
 ここにやってきて、己の半身が彼と同じオレンジ色に染まり始めるのを見たときにその不安は確信へと変わった。



 ―――男ジャックの命の灯火が消えかけている―――



 彼が消えた後、フェロー天使としてやらねばならない使命があることも漠然と理解している。
 なんて残酷な事実なのだろうか。
 物心つく前から彼と共にあり、笑うときもいたずらして怒られるときも常に一緒だった。
 彼が若神子として旅立つときには、大泣きしたものだ。
 いつまでも泣き止まない自分に男ジャックは困ったように、「一生の別れじゃあるまいし」などと頬をぽりぽりかきながら言っていたのを思い出す。
 でも今度の別れは―――





 「もう分かってるだろうけどよ。おいらたち7神帝は命を懸けて橋を作る。」
 分かっている。メリー天使はほぼ正確に全てを理解していた。
 それでも本人の口から聞く事実。これを残酷と呼ばぬしてなにを残酷と呼ぶのだろう・・・

 今まで人一倍苦労してきた神帝さんたちがなぜ犠牲ならなければならないの?
 行かないで。行ってはいや。傍にいて。

 喉まで出掛かるその言葉をメリー天使は必死で飲み込んだ。
 子供のときのように必死で泣いて取りすがればどれだけ気持ちが楽になるだろう。
 しかし、それが男ジャックにもっと辛い思いをさせることになると分かっている。
 どんなに泣こうと、どんなに引きとめようと彼は行ってしまうのだから。そういう人なのだから。そういう運命なのだから―――





 「悪いな。だけどよ、希望の橋だから。この桜や次界を守るための平和への橋だから。途中までおめぇに一緒にきてもらうことになると思うけどよ」
 男ジャックのいない平和は、自分にとって平和に感じるかどうかは分からない。
 それでも頷くことしか今の自分には出来ないのだとメリー天使は悟る。
 もう言葉を発することは出来ない。一言、声を発すると泣いてしまいそうだったから。だから彼女は無言で何度も何度も頷いた。
 彼女より頭一つ分、身長の高い男ジャックは、ポンポンと頭を軽く叩く。
 口が悪くて、天邪鬼で無愛想な彼だけど、本当はそうではなくて人一倍優しい。手のひらから伝わる感触にその事実を感じさせる。
 昔から知ってはいたけれど、自分にとって彼ほど優しい人間はいないのだと再認識する。
 それもまた残酷で―――










 ―――これは一生の別れじゃねぇよ。身体は滅びても魂は生き続けるんだ。お前がおいらを忘れないでいてくれたら、必ずまた会える―――





 彼愛用の武器、聖箔シェルを受け取ったときの彼の最後の言葉が胸に突き刺さる。
 忘れるわけがないわ。

 今、メリー天使の隣ではストライクエンジェル、レスQ幻神、オアシス幻神が真っ赤な瞳で空にかかる綺麗な、とても綺麗な7色の橋を見上げている。
 彼女らに比べれば、愛しい人の最後を見届けられた自分はとても幸せなのだとメリー天使は思う。
 「お前がおいらを忘れないでいてくれたら、必ずまた会える」男ジャックの最後の言葉を隣でたたずむ彼女らにも伝えよう。
 彼女らの愛しい人も、彼と同じ気持ちでいたのだろうから。





 ―――あなたが守りたかった次界と桜は私が守るから、いつまでも見守っていてね―――











―――あとがき―――

 これ、ひな祭り企画ですから(笑)全然、ひな祭りになってないけどね(^^ゞ
 しかもめちゃくちゃ暗い話なんだけどね(苦笑)

 ひな祭りのイメージ的には桜。カレンダー神帝的には3月は牛若なんですけど・・・
 牛若メインでは私の力量では申し訳ないけど無理・・・
 と言うことで、代役は男ジャックと言うことで(笑)

 結みるくの住む北海道では桜が咲くのは5月だから!!!←言い分け(笑)

 男メリは大人なカプだと思います。言葉はなくても通じ合ってるというか(笑)
 だけどさ、メリー天使は不憫だなと思う・・・フェロー天使として最後を見届けなければいけないんだから。
 別れを惜しむ間のなく、フェロー天使としての役目が待っているんだから・・・

 ところで、一切アリババなしの話は、これが初めてじゃない???(笑)
 めんずらしい〜〜〜・・・(笑)


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