ここはどこ?オレはだれ?なんでオレ生きてるの?
 死んでしまいたいよ。オレなんか死んだほうがいいんだよ。
 なんで生きてるんだよ――――――





 ジオ界、オレは罪を償うためにこの世界に飛ばされた。
 大切な人を罪のない人を傷つけた。
 大切なとても大切な次界をそして曼聖羅をこの手にかけてしまった。
 オレは生きていてはいけないんだと思う。だけど・・・だけど・・・
 このまま死ぬには罪が重すぎる。だからなんだろうな。神はオレに新しい大地となることを命じた。
 こんなことで全ての罪が許されるとは思えないけれど、せめてこの世界に息吹く命は守ろう。
 次界や曼聖羅の分までオレはここを守らなければいけない―――





 だけど―――
 なんで?なんでなんだよ???なんで?なんで?なんで?
 なんでお前らまでいるんだよ?お前らは次界で幸せにならなきゃ駄目だろ?
 なんで、ここにお前らがいるんだよ?


 「アリババ〜。元気〜?風の神様って楽じゃないんだねー。でも大地そのものやってる君のほうが大変なんだろうねー。」
 ヤマト・・・いやそういう問題じゃないだろ?オレにとってはなんでお前がここにいるかのほうが問題なんだよ。

 「アリババ元気でいるか?森の神様って言ってもおいら豆の木しかわかんねぇんだよな。ま、フッドに色々聞きながら頑張ってるぜ」
 ダンジャック・・・お前は相変らず豆なのか?そりゃフッドも苦労するだろうな。

 「アリババここらにいるのか?水の神なんて引き受けるんじゃなかったぜ。ダンジャックやらフッドやら雨を降らせろってうるさいんだぜ」
 一本釣・・・なんでオレがここにいることわかってるんだよ!?だけど木や土にとって雨がなきゃヤバイだろ。

 「アリババ聞いてるか?土の神っていうのは緑や水があってこそだというのにダンジャックも一本釣も融通が利かなくて困っているぞ」
 フッド・・・聞いてはいるけどさ。あいつらに融通を求めるのは無理ってもんじゃないのか?

 「アリババ〜!ダンジャックがさ!自分の前で火を起こすなっていうんだよ!ひどいよね。火がなきゃ寒いって言うに決まってるのに」
 ピーター・・・そりゃ、火は大事だろうけど、木のそばで火をおこすのは問題あるだろ?

 「アリババ元気ですか?金なんてのを産み出すのは結構労力がいるんです。」
 牛若・・・お前の言葉には全然大変そうなのがにじみ出てないんだけど・・・相変らずの優等生だな。





 なんでみんなオレなんかに話しかけてくれるんだ?オレはお前らにとって憎むべき存在なんじゃないか?
 また、お前らはオレを許してくれるのか?一度ならず二度までも悪魔化してお前らを・・・お前らの世界を傷つけたオレを許してくれるって言うのか?
 お前らは許してくれてもオレは自分を許せない。
 だけど、ありがとう。本当に―――



 オレ本当は寂しかったんだ。お前らと一緒にいられなかった事が。お前らと一緒に死ねなかった事が。
 曼聖羅で一人で過ごしてたとき、どれほどお前らを焦がれていたかお前らにはわかんないだろ?
 そんな心の隙を悪魔が付け入ったんだ。オレは自分の心の弱さが許せない。
 だけど今、お前らが一緒にジオ界を支えてくれて本当はすごく嬉しいんだ。
 照れくさくって面と向かっては言えないけど、今はお前らにオレの姿は見えないはずだから、だから言える。
 ごめんな。ごめんな。そしてありがとう。
 お前らにはたくさん勇気をもらった。もう大丈夫。一人で平気。



 だからお前らは帰れよ。次界に。お前らのおかげでこの世界は潤ったんだ。お前らは故郷で幸せになれ。
 もう二度と会えないだろうけど、決してお前らを忘れない。お前らにもらった勇気をもう二度と手放さない。だから幸せになれ。





 「アリババ、あなたも幸せになるのです。あなたがいないと汎神たちの幸せは永遠にないのです。」
 自らの意識に流れこんでくる声にアリババは驚愕する。
 「聖神ナディア様?」





 「僕たちの故郷って・・・ここだよね?」
 「当たり前でしょう。」
 「ここの大地はアリババなんだからな」
 「7人揃っていられるところが僕たちの故郷」



 次々と流れ込んでくる仲間達の・・・親友達の声・・・
 「・・・オレ本当にみんなと一緒にいていいの?本当に?夢じゃないの?」



 ―――あなたにはその資格があるでしょう―――



 気づいたときには自分の手が見えた。とっくにあきらめていた自分の肉体。
 トレードマークのターバンから流れる長髪が頬をなぞる。
 オレ、肉体出来たんだ。
 ナディア様が作ってくれたのかそれとも、親友たちが作ってくれたのか・・・たぶん両者なんだろう。



 「・・・よぉ。久しぶり」
 伝えたい言葉はいっぱいあるはずなのに何を言っていいか分からない。こんな言葉しか出てこない。
 だけど、みんながオレを歓迎してくれたことだけは分かった。
 ありがとう。ありがとう。言葉にはならないけれど・・・





 「この世界はもう俺たちがいなくても大丈夫だよ。さぁ帰ろうぜ。俺たちが出会ったときから目指した俺達の夢の楽園に」

 もうこれで十分な気がした。言葉なんてなくてもオレの気持ち伝わってるよな?







―――あとがき―――

 故郷SideA・・・つまりアリババの一人語りでした・・・
 神帝たちの心のつながりって絶対絶対何者にも負けないと思うんですよね〜♪
 少しでもアリババの苦悩を感じてくだされば光栄です。
 そしてアリババはやはり曼聖羅で暮らす間寂しくて寂しくて仕方がなかったんだと思っていますので、そのことを書けて私は嬉しいです。
 6汎神たちがどれだけアリババを大事に思っているか、アリババが仲間達にどれほど感謝しているか・・・それを思い描きました。

 先日チャットでご一緒下さったあゆみ様に捧げます。
 「故郷」を読んでくださって「このときのアリババの心境はいかに?」と言う話題から生まれた代物ですから(笑)
 あゆみ様に限り煮るなり焼くなり蒸すなり(笑)ご自由にどうぞ。


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