「だから、なぜ私がお前達と共に戦わねばならないんだ?」
 「だからお前はもう敵じゃないんだから一緒に戦ったっていいだろ?」
 「しつこいぞ。なぜ敵じゃなければ味方という発想になるのだ!?」
 「同じ敵を持つんなら味方だろって言ってんだよ!」
 「私はそれが単純思考だと言ってるのだ。」
 「なんでだよ!俺たちとお前が組めば良い事ばっかりだろう!」
 「たとえばどんないいことがある?私には良い事など思いつかぬ!」



 ここは天聖軍のリーダー、アンドロココの執務室。
 そして部屋の主を完全に無視して先ほどから激しい攻防ならぬ口げんかをしているのはロココの忠実な部下、神帝隊の一人の聖Iアリババと敵であるはずのワンダーマリア。
 口論が激化してしまい、2人とも説明を全くしていないがため、ロココは目を丸くし、二人の後ろで同じく呆けているほかの神帝隊たちに助けを求めるかのような瞳を向ける。
 そんなロココの心境はいたし方がないところ。
 そもそもここにいるはずもない悪魔であるワンダーマリア、そしてどういう経緯なのかは全くわからないがパワーアップしたアリババ。
 驚くなと言うほうが無理がある。



 「あの・・・ところで、二人とも事情を説明してくれませんか?何がなんだかさっぱり分からないんですが」
 後ろの6神帝もあまり事情を把握していないと判断したロココは恐る恐る口論中の2人に問いかける。
 「あっ。ロココ様すいません。実はマリアが俺たちと共に戦ってくれることになりまして、心強いことこの上ないですね。」
 アリババの中では既にマリアは味方であった。マリアの了承なしにあっさりとこう説明する。
 もっとも当のロココにしてみれば説明不足もいいところであるが。





 勘の鋭いアリババは気づいている。度々対峙してきたロココとマリアの間にお互いへの独占欲、少なからず愛と言う感情があることを―――
 互いに使命やらプライドやらで、本人達はよく分かっていないようであるが、その実、心の奥底では思いやる心がある。
 マリアが神帝隊である自分を悪魔化させ傍に置いておこうとしたのはロココへの憧れで、神帝隊に慕われているロココへの嫉妬なのだ。
 一番マリアにひどい目に合わされている自分さえ彼女を許せば、全てがうまくいくだろうこともアリババには分かっている。

 「一人は寂しいに決まってる。同じ目的があるんだからお前は俺たちの味方だ。」
  だから・・・と、まだ不服そうに言いかけるマリアに今度こそアリババはぴしゃりと言い切り、有無を言わせない。
 「ロココ様、俺はマリアのおかげでこうしてパワーアップできました。マリアは俺を殺そうと思えば何度も殺すチャンスはあったはずなのに、こうして助けてくれました。マリアは俺たちの味方ですよね!?」
 「え、えぇ・・・」
 アリババは尊敬するロココにまで有無を言わせず詰め寄るり迫力でロココを頷かせてしまった。
 「天使も悪魔もお守りもみんなが幸せになれる世界を作りましょうね」
 満足そうにそう言ったアリババは後ろの6神帝を促し部屋を後にする。後はロココに任せればいい。





 他の神帝たちを引き連れるアリババは相当嬉しいのか、まるで犬の尻尾よろしくとばかりに、翼をぱたぱたさせて喜びを表す。
 そんな様子を眺めながらやっと我に返り始めたヤマト爆神は「アリババ翼あるんだねぇ」などと呟きながら微笑む。
 「やっぱりペガサスには翼だよね。」ヤマトに続き同じく微笑んで言葉を発するのは聖幻ピーター。他の者達も心底嬉しそうに頷いている。
 人一番辛い想いをしてきたアリババ。一時は悪に染まってしまった彼。
 そのことを本人がどれだけ気にしているかは見ているほうは痛いほど分かっていた。
 気にする必要などないのに。彼が戻ってきたことこそがみんなの勇気で励ましだというのに。彼本人のみが気にする彼の黒い部分、仲間達はどれほど取り払ってやりたかったことだろう。
 だからこそ、「天使だ」と主張しているかのような真っ白い大きな翼が仲間達には光り輝いて見える。



 「ところでさ。ヤマト。」
 仲間達があまりにも自分の翼を感慨深げに眺めていることに照れくささが先にたち、アリババはわざとらしく話題を変えようと試みる。
 「なに〜?」まだ楽しそうに、いじらしそうに、アリババの翼をつんつんと触っていたヤマトは、天聖軍最強の神帝隊リーダーとは思えぬほどかわいらしい声で返事をする。
 「お前、マリアから聖球もらっただろ?たぶんだけど、聖球を使えばお前らもパワーアップできると思うぜ。」
 アリババは夢の聖球の力を借りて新理球を生み出し、その理球の秘めた力によりパワーアップを果した。
 その時に仲間達も同じようにパワーアップした姿が目に浮かんだ。聖夢源出身の彼独特の夢見の力も働いたのであろう。
 「5つの理球が生まれたら、その力を使えば失われたはずの幻と界の理球も作れると思う。」
 聖球がないピーターと一本釣が微妙な表情をしたのを見逃さず、アリババは付け足すように説明した。



 藍色の理球を先導に次々と生まれる色の力。紫、緑、黄、橙、そして青、赤。6人の神帝たちはあたかも自分に与えられた色がどれなのかが初めからわかっていたかのように自然に自らの色に身を任せる。
 藍色から聖Iアリババが生まれたように、紫から聖Vヤマトが、青から聖B一本釣、緑から聖Gフッド、黄から聖Y牛若、橙から聖O男ジャック、そして赤から聖Rピーター。
 それぞれ感慨深げにパワーアップ後の仲間の姿を確認している。
 「力が身体にみなぎってる。この力で戦いを終わらせよう。」
 「マリアも戦ってくれるし、すぐに終わるよな。」
 ヤマトの言葉をアリババが引き継ぎ、全員で頷く。そして顔を見合わせて笑った。夢にまで見た平和な次界を想像しながら。



 「平和な世界になったらさ。ロココ様とマリアの子供、見たいよね。」
 ものすごく気の早いヤマトの呟きにまた全員で笑う。
 「俺の足がまだ馬足だったらロココさまとマリアの子供を背に乗せてあげたかったな。子供はみんな馬の背好きだから。」
 自分の2本の足を眺めながら、心底残念そうなアリババには全員で苦笑いを浮かべる。
 初めてアリババに会った時、まだ騎神であった彼は子供達に囲まれ、変わりばんこに背に乗せてあげてたな。とヤマトは思い出した。
 あの時の子供達は本当に楽しそうであった。今にして思うとアリババは相当の子供好きなのだろう。だとしたら2本足でも彼なら二人の子に好かれる事間違いなしだな、とぼんやりヤマトは微笑ましげに考える。
 「平和になったら、自然に見ることが出来るでしょう。二人の間のお子を。まずはこの世界を新たに得た私達の力で平和に導きましょう。」
 やんわりと微笑みながらの牛若の言葉にまた全員で笑う。







 数ヶ月の後に7神帝の尊い犠牲の元、聖魔和合がかなう。
 その際、生まれたロココとマリアの子供を神帝たちは見ることがかなわなかった。
 それでも平和を誰よりも願った神帝隊の想いは次界の空に浮かぶ綺麗な7色の虹と共に長い間、かない続けるのであった。





 ロココとマリアの子を背に乗せてあげたい。そんなアリババの願いはまったく別の形でかなうことになるのだが、それはまだまだ先の話―――








―――あとがき―――

 前編から間が空いて申し訳ないです・・・
 虹神帝を書くとどうしても暗い話になるんですけどね・・・
 でも虹神帝はみんな満足して逝ったんだと思う。そうであってほしいと思う。それでなければせつな過ぎる。
 7神帝の物語は虹突入でとりあえずの終止符ですが、ヤマトの子孫であるウォーリア、5神帝の生まれ変わり(?)であるベイギャルズ、アリババ本人であるペガ、そしてロコマリの息子マルコの物語の始まりですよね。
 新ビックリマンのアニメでは神帝隊の直接の絡みがなかったことが残念だったけど・・・
 それいけ!神帝隊!そして新ビックリマン〜!!!


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