聖Iアリババは復活した真っ白で大きな羽をぱたぱたと風になびかせながら一人夜空を眺めていた。





 「綺麗だね」
 突如声がしたほうへ目をやるとそこには聖Rピーターがたたずんでいた。
 「たまたま外を見てたら君がここにいるのが見えて来ちゃったよ」
 笑顔でそう語るピーターにアリババも「そっか」と一言言って笑顔を返し、また夜空を見上げた。
 「次界の星も綺麗だね。天聖界も綺麗だったけど」
 先ほどのピーターの言葉が夜空のことと思い込みアリババは素直に同意する。



 「何やってたの?こんなところで。なんか悩み事?それなら相談に乗るけど」
 夜空を眺めていたアリババの背中がなんとなく小さく見えた。
 神帝時代からアリババはみんなに比べて小さかった。神帝隊で一番年若いこともあり、あのころはあまり気にしたことは無かったけれど、聖Iにパワーアップして身長こそ伸びたものの体つきは華奢だった。
 長い闘病生活のつけなのだろうか?
 本人は闘病生活のことを多くは語らぬが左腕と左足を切り落とし聖ボット化しているのだ。大変な苦痛とリハビリを兼ねたに違いない。
 しかも本当はまだ療養が必要であったにもかかわらず神帝隊が悪魔軍に大苦戦していると言う報に天聖界を飛び出してきたと聞く。
 スーパーゼウスやシャーマンカーンによると、激しい動きをすればまだ熱を出したり具合が悪くなることもあるらしい。
 本人はいたって元気そうにニコニコしているが、それが意地っ張りなアリババ特有の強がりだと言うことは明らかであった。
 大事な友のことを気づいていないわけが無い。あの鈍チンの一本釣ですら気づいてるよとピーターは心の中で苦笑いを浮かべる。



 そんなアリババだから一人にさせたくなかった。泣くときも笑うときもみんなが付いていてやりたかった。もう一人にさせたくなかった。
 お節介承知でアリババに声をかけたのはそんなピーターの願いからだ。



 「特に悩みってほどのことじゃないけど」
 と、しばらくの後、小さな声でアリババが返答した。
 「言ってごらんよ。言えばすっきりするから。」
 悩みじゃないまでも、なにか物思いにふけってたんだとアリババの様子から瞬間的に判断したピーターはなるべく軽く聞こえるように口を開いた。
 言い渋る自分に催促するわけでもなく、黙ってそばで星を見上げるピーターに観念したのかアリババはぼそぼそと語り始めた。
 「俺さ、みんなと一緒に戦えること夢なんじゃないかとかたまに思うんだ」
 驚きに目を見開いてしまったピーターを見て、薄く笑ってアリババはさらに言葉を続けた。
 「みんなが苦戦してるって聞いて、いてもたってもいられなくなってゼウス様の制止を振り切って来ちゃったんだけど、なのに皆みたいに戦えなくて結局足手まといで・・・」
 「そんなこと思ってない!」
 アリババの言葉を遮り突如ピーターが叫ぶ。
 本人が思っていたよりも大きな声だったため、恐怖に瞳が揺れているアリババを見てピーターは内心しまったと思った。
 アリババが次界で自分達と戦いたいとゼウスに頼んでいるのは知っていた。それでも二度と彼を危険な目に合わせたくなくて5神帝は頑なにゼウスとカーンにアリババを制止させるように頼んでいたのだ。
 それでも来てしまったアリババに守ってやれるのか?と恐怖を感じたと共に、久しぶりに全員が揃ったことに嬉しさもこみ上げたのも事実だった。
 涙一つ誰にも見せずにいつも笑顔なアリババの変わりにピーターが涙ぐむ。
 「来ちゃだめだって何度も君を止めたけど、君が来てくれて本当は嬉しかったんだ。7人で戦えることがすごく嬉しかったんだ。他の皆もたぶん同じ。」



 「・・・それ・・・ほんと?」
 すがるような瞳で自分を見つめるアリババはまるで子猫のようでピーターはその姿に小さく笑った後「ほんとだよ」と優しくつぶやいた。
 「君が思うように戦えなくて悩んでたのは知ってる。だから君がパワーアップしたときはどれほど嬉しかったか。戦闘中だったにもかかわらず抱きつきに行きたかったくらいだ」
 「もしかして、俺の気持ちってばればれだったってこと?・・・必死で隠したのに・・・」
 今まで見たことも無いほど落ち込んでいる様子のアリババに、そんなことも分からないほど安っぽい付き合いじゃないのにとピーターは笑いがこみ上げる。
 それに不貞腐れながらも幸せで、この際全部吐き出そうとアリババは笑ったままのピーターに向かって再び口を開く。
 「本当はね、まだ怖いんだ。一気にいろんなことがありすぎて、全部嘘じゃないかって・・・一度寝て目が覚めたらまた天聖界の見慣れた病室なんじゃないかって思うときがあって・・・」
 さすがにこれは予想外だったのかピーターは一気にまじめな顔に戻る。
 彼がどれだけ寂しかったのか、どれだけ苦しかったのかが判ったような気がした。
 「嘘じゃない。夢じゃない。本当のことだよ」
 顔は笑っているものの心は泣いてるアリババの頭をぽんぽんと優しく叩きながら呪文のように繰り返す。
 触れてしまった彼の左肩は冷たくて否応なしにそこが聖ボットパーツであることを思い知らされる。
 そうまでして、自分達と共にいたいと願っていてくれたアリババに感謝しても感謝し切れなかった。





 「さっき、僕が綺麗だって言ったのは星のことじゃないんだ。君のその大きな羽の事だったんだよ。」
 暗闇の中、きらきら輝く真っ白な大きな羽は本当に綺麗だったのだ。
 あまりに予想外だったのかアリババは呆けてしまっていたが、しばらくの後、考えながら口を開いた。
 「綺麗なんかじゃないよ。俺は魔洗礼の跡が残ってるし、聖ボットだし、だから完全な天使じゃないし・・・醜いんだよ」
 ぽつりぽつりと搾り出すような声で語るアリババの背を思いっきり叩いてピーターは笑う。
 「綺麗だよ。君の身体は確かに完全な天使じゃないかもしれない。けど君の心は真っ白で綺麗だ。僕にはその羽が全てを物語ってるような気がする。芸術にはうるさい僕が言うんだから確かだよ。」
 最後は茶目っ気たっぷりにウィンク付きで語ったピーターが可笑しくて、アリババは声を出して笑った。こんなに笑ったのはいつ以来だろうと思いながら・・・





 その夜7神帝は一つの部屋で円になり、手を繋ぎながら眠った。アリババが寂しくないように・・・悪夢を見ないように・・・
 まだ神帝に成り立てだったころ天聖界が恋しくて自然と手を繋いで寝ていたあの頃のように・・・








―――あとがき―――

 この話・・・はっきり言っちゃうと要点は「聖Iアリババの羽が綺麗だ」ということだったりします(^^ゞ
 もっとはっきし言うとアリババの相談を受けるのは誰でも良かったともいいます。
 うんが〜!!!なぜにピーターだったか・・・
 羽が綺麗だと言うことを語るには「芸術にうるさい」ピーターが一番良かったのです(^^ゞ
 でも書きながら思ってたことはピーターでよかった(笑)
 男ジャックや一本釣だと熱い男過ぎて話がまとまんないだろうし、フッドや牛若だと冷静すぎて書きにくい・・・
 ヤマトだと感情移入しすぎてアリババをめちゃくちゃにしてしまいそう(^^ゞ
 ピーター最適(笑)とか言いながら・・・実は・・・結構・・・幻夢に興味があったりするのは内緒にしたほうが良いですか?(笑)

 ちなみに当サイトのアリババさんは神帝隊で一番年下で。
 アリババはいくら辛くても絶対に人前で涙は見せない意地っ張りさんなんだろうな・・・求む!アリババの幸せ(笑)


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