※ハピラキ放映途中で書いたものなので最終回終了後である現在は矛盾があります。あしからず・・・
「やだよ。助けて。オレを一人にしないで。」
ネコのぬいぐるみを、その胸に抱きながら熟睡していたフッドは隣にいるアリババの声で目が覚める。
「どうしたのだ?」
寝ぼけ眼でそうたずねるものの、返事はない。
どうやら彼は夢を見ていて、うなされてる模様だ。
その寝顔はあまりに辛そうで、さらにはひどい寝汗をかいている。
「おい、アリババ、起きろ」
ただ事ではないと感じフッドは顔をしかめながら、ゆさゆさと彼の身体を揺さぶって悪夢を取り払ってやるべく起こしにかかる。
「・・・あれ?・・・フッド?」
ビクリと飛び起きたアリババは状況がまるでつかめていないのか不思議そうな顔で、少しかすれた声でたずねる。
「どうした?」
質問を質問で返すフッドにアリババは「なんでもない」と一言だけ答えたあとは、口をつむいでうつむいてしまう。
言葉とは裏腹に、その顔には疲れがにじみ出て、顔色は真っ青。よほど嫌な夢だったのであろう。
フッド自身も記憶がなく、たまに霧がかかったかのような、それでいてどこか懐かしいような光景を夢で見ることがある。
しかし、アリババは結構鮮明な夢を見ているのではないだろうか。
自分よりもアリババのほうが記憶が残っている。そう考えるべきかもしれないとフッドは考える。
だが、あの苦しげな言葉はなんなのだろう。
フッドの手が、いまだ真っ青な顔をした、アリババの背に回り、彼を引き寄せその胸に抱く。
すりすりと、まるで赤ん坊をあやすかのように優しく自分の背をなでてくれるフッドにアリババも少し落ち着きを取り戻しはじめ、それを肌で感じ取ったフッドは、先ほどと同じ意味を持つ質問を投げかける。
「話してみろ。おまえの夢が私たちの失った記憶に由来するならば、私がその内容を知っていることで、防ぐことができるだろう。一人で悩む必要などない。」
普段のネコバカおたくっぷりが、激しく印象に残るフッドも、その実、結構冷静で先を見据えた行動を取ることもできると言うのは、一緒に旅をしていてアリババは気づいていた。
ただのネコバカオタクではないのだ。
いや、『ただの』ネコバカオタクではなく、『強烈な』ネコバカオタクなのであるが、それはまた別の話。
アリババは、そんなことを考えて、くすりと口元だけで微かに笑って、ポツポツと夢の内容を語り始めた。
「はっきりとはわかんないんだけど、気づいたらオレ、いつも一人なんだ。暗いところに閉じ込められてる。」
記憶を失う前も仲間として、ともに行動していたはずだ。
それはヤマトがスーパーゼウス様から直接聞いたと、以前に教えてもらっている。
現に、今、アリババとともに旅をしていて、初めてのような気はしない。どこか懐かしいと、ふと感じるときがある。
記憶には霧がかかっているものの、そんな懐かしさがスーパーゼウスの言葉を明確に裏付けているのだ。
だが、共にいたはずのフッドには、アリババが語るその内容にはまったく思い当たる節がない。
「・・・助けて。って言っても誰も助けてくれなくて・・・暗いところは嫌い。一人になりたくない。置いていかないで。」
話している間に、再び感情が高ぶったのか、アリババは最後のほうは涙声で悲壮感を漂わせる。
それは夢の中の話と言うよりも、今、フッドと離れて一人になることすら嫌がっているようで。
涙に濡れたその瞳は、強い懇願を表し、フッドに抱かれるその身体には力が入る。
フッドは、ため息を付きたい衝動を必死で抑える。
それをやってしまうと、この腕の中で震える存在の不安をあおるだけだから。
置いていく気は毛頭ない。一人にさせる気ももちろんない。
ネコグッズで癒しは得ても、物言わぬそれらと居るよりも、ギャンギャン言いながらのアリババとの旅のほうが楽しい。
それをどう伝えてやるべきか。
「置いてなど行かない」そう言ってやることは簡単なのだ。
だが、そんな上っ面だけの薄っぺらい言葉は、こいつは求めてはいないはずだ。
だから、いつか魂で分かってほしいと思う。記憶なんてなくたって、めぐり合うことができる、仲間の絆を。
その魂の絆を信じてほしいとフッドは切に願うのだ。
だから、ありきたりの言葉なんて言いたくなかった。だったら、かける言葉はこれだろう。ニヤリといたずらな笑みを浮かべるフッド。
「おぉそうか。そんなに私のネコちゃんグッズの荷物もちがしたいのか。それは結構。」
そんなフッドの相変わらずなネコバカオタクっぷりに、シリアスモード全開でイジイジメソメソしていたアリババの背がピキリと音を立てたかのように固まる。
「・・・フッド〜〜〜〜」
怒気を含んだ低い低い呟きとともに、アリババはいつものごとく、いつものようにフッドに食ってかかる。
しばらくは道化を演じるのも、それもまた良し。
不安や不信に心を奪われるなら、その度に、一つ一つ正してやろう。
―――何度も約束を破ってしまったが、もう二度とお前を失うことはしないと誓わせてくれ―――
ふと、心に灯ったフレーズに、フッドは息を止めるかのように驚く。
『約束を破る?』『もう二度と?』
ソレハナニ?
「おいフッド?なに呆けてんだよ」
いつもの調子を取り戻したアリババの、そんな言葉に、現実に引き戻される。
作戦は成功したものの、ジロリと横目で見られながら呆れられる筋合いはないように思うが、これも悪くはないかもなと、マニアックなことを考えるフッドであった。
「ところでよぉ。今の、誰にも言うなよ。」
真っ赤になってプンプンしながらそっぽを向いたアリババの「今の」とは、泣いたことを示すのだろう。
これは、また・・・良い弱みを握れたものだ。
こいつがまた、ありもしない疑念にとらわれるならば、この弱みで脅しながら前を向かせるもの、楽しいかもしれない。
―――あとがき―――
ハピ☆ラキ28話のフッドがアリババの弱みで脅してるところから、派生してしまった(^^ゞ
笑う場面だったにも関わらず、なぜにシリアスになるのか自分でもよく分からん〜!!!
そして、ハピ☆ラキの話が進めば矛盾する可能性がかなりあるSSとなります(笑)
ちなみに、神帝になった直後にまとばに導かれたのならば、アリババがゴーストや魔穴のトラウマ(?)に悩まされる意味が良くわかんない。
8話のゴーストに関しては、「神帝になった直後」が判明した回と少しばかり時間が空いてるのでハピラキ自体の矛盾で片付けようと思えばできるんですけど・・・
27話で判明し、28話で魔穴のトラウマ・・・しかも脚本は同じ人。なんか裏がありそうな気がするのですよ・・・
なので、魔穴後じゃなきゃ発生しないようなフッドの記憶(?)もちらりと入れてみた(笑)
ところで、「フッド」「アリババ」と呼び合ってる二人が強烈に萌えます!!!
他の若神子のことは「ヤマト王子」「牛若天子」「天使男ジャック」って言ってるのに!他の若神子同士よりも仲良しさんなのかなぁ?
ヤマトと男ジャックが」相棒ならば、フッドとアリババも相棒と言うのも良いかも♪
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