「綺麗じゃぞ。ミーティア。」
 トロデーン国王の一粒種、国王にとってまさに目の中に入れても痛くないほどの愛する娘ミーティア姫と近衛隊長エイトの結婚式。
 控え室で、まだ準備段階だというのに、ウェディングドレス姿の愛娘にすでに目をうるうるさせているトロデ王は、先ほどから何度も何度も同じ言葉を発しているのであった。
 ミーティアがこのドレスを着るのは実は2度目。
 一度目の時の控え室では、トロデ王にとってもミーティア姫にとっても心の底では望まぬ式であったがために、ドレスの感想などと言うものはないに等しかった。
 そう。あれは世界を救う旅から復興直後のこと。本当に望まぬウェディングドレス姿であった。
 幼き頃より娘の想い人を十分すぎるほど知っていたトロデ王だ。
 その想い人に嫁がせてやれないばかりか、婿となろうとしていたサザンビークの王子はわがままで自分勝手で性格も最悪で、見栄えも冴えないと、いいところを探すのに苦労するタイプの人間だったのだから。
 結局はミーティアの想い人と、その仲間の活躍により話は流れ今日と言う日がある。





 当時のことを考え益々、今日と言う日のありがたさを思ったのか、また同じ言葉を繰り返す。
 「綺麗じゃ。本当に綺麗じゃミーティア。さすがはワシの娘じゃ」
 そんな父の気持ちが痛いほど分かるのであろう。そして信じられなくて幸せで、ミーティアは黙ってニコニコと頷く。

 そんな様子を眺めながらゼシカは心の中で激しい突っ込みを入れていた。
 確かに本当に綺麗だけど、それは絶対の絶対にトロデ王の娘だからじゃない。と・・・
 もっともそれはゼシカではなくとも突っ込みたくもなるであろうが。





 「ゼシカさん本日はわざわざ来てくれてありがとうございます。」
 式が始まってしまえば、花嫁であるミーティアとはろくに話をすることも出来ないと思い、先に挨拶をと控え室にゼシカは訪ねていたのであるが、トロデ王がミーティアを離すことなく感激しているので、これはこれで挨拶も出来ずにいた。
 そのゼシカに、苦笑いを浮かべミーティアが助け舟を出したのだった。

 「ミーティア姫、本当に綺麗ね。そのドレスもすごく素敵で似合っているわ。」
 お世辞などではない。心の底からゼシカはそう思う。
 あの旅の間も、それが終わってからもサザンビーク王子のおかげで相当に苦労と寂しい想いをしてきたはずだ。
 エイトへの想いとトロデーン王女の立場との板ばさみであったであろう。
 ミーティアがどれほどの気苦労をしていたかゼシカには計り知れないものがある。



 「このドレスはな、ワシの后が着たものじゃ。新しいものを作ってやると言うワシにミーティアは、お母様の物がよい。などと嬉しいことを言ってくれてのぉ。なんと出来た姫であろうか。」
 そう言って、トロデ王はまた喜びにむせび泣く。
 こうなってしまえば、もうほおって置くしかない、とミーティアとゼシカは顔を見合わせて微笑みあうのであった。



 「お母様はミーティアがまだ幼い時に亡くなられているので、あまり記憶にないのですが、このドレスを着るとお母様が本当にお父様を愛していたのだと実感できるのです。」
 そんなミーティアの言葉にゼシカは、どこら辺を愛していたの?と突っ込みたいのを必死で耐える。
 結構わがままで、かなり自分勝手で、少しばかり短気で、お世辞にも見た目が良いとは言えないトロデ王である。
 こう言ってしまえば、ミーティアの元婚約者であるチャゴスとそう変わりはない。
 それに気づいて、ゼシカはトロデ王は結構お茶目で、年の割には素直で可愛らしくて朗らかだな。と自分の心に付け加えた。

 そんなゼシカの心のうちを知ってか知らずか、感慨にふけりながらトロデ王はまた口を開く。
 「そうであろう。后はのぉ、本当に綺麗でミーティアにも引けを取らぬほどであった。美しいというのにそれを鼻にかけることもなく、優しくてのぉ。」
 「そうでしょうね」
 今度こそゼシカは心を抑えることが出来ずに口に出してしまう。
 そうでなければトロデ王からミーティア姫みたいな娘が生まれるわけがない。と言うのはさすがに飲み込んだのであるが。





 久しぶりに会ったトロデ王は本当に相変らずで、この義父とうまくやれる人間などはエイトしかいない。控え室を辞した後小さなため息と共にゼシカはそう確信した。
 しかし、それでよいのだ。トロデ王にとってもエイトは既に息子のようなもの。そして、とても頼りにしているのだ。
 それは、あの旅の間にもトロデ王の態度の節々から感じられている。エイトだって、この人を心の底から尊敬しているのだから。





 親子3人。それぞれが違う意味で天然で、違う意味で朗らかで。それが長いときをほがらかに幸せに生きた秘訣かもしれなかった。









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 主姫結婚式ネタ。なのに主人公は一切出てきません(笑)
 実はある程度は主人公も書いてみたんですよ。
 ところがどうしても・・・ダブルんですよ・・・
 すでにヤンゲル、ククゼシの結婚式ネタを書いてしまっているので・・・やはりどうしてもダブります。ネタが(^^ゞ
 さすがに3回も同じネタで行くのは自分自身はばかられるんですよね(笑)
 一応主姫メインサイトでありながら、主姫の結婚式が一番適当なのはどうかと思わないでもないんだけど・・・
 うんが!主姫といえばトロデ王!そうなのか?と突っ込んではいや〜〜〜ん(^^ゞ
 私の主姫には必ずといってよいほどトロデ王が出てくる。ならばそれを逆手にとってある意味トロデ王メイン的に話を作ってしまおう!とか考えました(笑)

 でもね、実は結構満足してます。だって私トロデ王大好き♪なんだもん(笑)
 ・・・・・というか今回はトロデ王に対するゼシカの突込みがメインともいえないことはない・・・
 だけどやっぱ不思議なんだもん。トロデ王からミーティア姫が生まれたことが(笑)





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