私には「お色気」なんてスキルがある。

 そりゃ、スタイルはいいほうだという自覚はあるけど戦うことには何にも関係ないわ。だから私はお色気には絶対に大切なスキルポイントを振り分けないつもりだった・・・。





 最近、攻撃力も防御力も高いモンスターとの戦闘が続いている。戦闘が終わった途端にみんな座り込んでしまうくらい。

 エイトや気休め程度の回復魔法を使うことの出来るヤンガスまで戦闘終了後に皆の傷を治すために一生懸命だ。

 そんなときには、みんなの回復をしてあげることの出来ない私は少し肩身が狭いのだけど・・・

 でも、それでも道具袋にある薬草をすりつぶしたり私なりに頑張っている自覚はある。



 なのに、なのによ。ククールのやつは、やる気があるのかしら?本当にむかつくわ。

 攻撃魔法しか使えない私や打撃が得意なヤンガスまで、回復のために一生懸命で疲れていると言うのに、腐っても僧侶と言う職業柄、回復呪文には誰よりも秀でているククールは余裕なのか、馬鹿にしてるのか分からないけど、憎まれ口たたいてはふらっといなくなる。

 なんなのよ、あいつ。一応みんなの回復が終わってからいなくなるのが救いだけど・・・っていうか、みんながまだ傷だらけのときにいなくなったら、それこそ一発殴ってやるけど・・・



 「血のにおいがひでぇ。新鮮な空気吸って来るぜ。」

 大げさに肩をすぼめて、また和を乱そうとするククール。

 みんな真剣なのよ。必死なのよ。戦闘中も回復優先で行動しているあいつは疲れてないのかもしれないけど、みんな疲れてるのも痛いのも我慢してるのよ。

 もう私、堪忍袋の緒が切れた。一言、怒鳴ってやろうと思った瞬間・・・エイトに腕をつかまれた。好きなようにさせて上げてと言わんばかりに・・・

 エイトはククールに甘すぎるわ。そりゃ、みんなの意見を尊重してくれるけど・・・あいつを甘やかしてばかりじゃこの先思いやられるわよ。

 そう思ってる私の心情に気づいたのかエイトは静かに話し始めた。

 「ククールはたぶんね、今みたいにふらっといなくなるときは気分が悪いんだと思う。」

 何を言い出すの?そんな私の表情を確認しながらエイトはなおも続ける。

 「回復魔法ってね。すごく疲れるんだ。自分の中にある生のエネルギーを他人に分け与える呪文だから・・・高度な回復呪文ほど自分の生エネルギーを使わなくてはならない。オレもね、体力的につらい時に回復呪文を使うと意識が遠のきそうになることがある。」

 それってどういうこと?私の心の中に渦巻く疑問をエイトは丁寧に説明し始めた。

 「回復魔法は使いすぎると寿命を縮めるとすら言われてる。外傷は確かにヤンガスやオレに比べてククールは少ない。でも、戦闘中も戦闘後もずっと高度な回復魔法を連続で使っているククールが一番つらいはずだよ。分かってあげてゼシカ。オレ達に弱った姿を見せたくないから、あんな言葉をわざわざ言っているんだと思う。そっとしておいてあげて。オレらにはどうしてあげることも出来ないから」

 ・・・・・うそでしょう?・・・うそよ。絶対うそ。

 まだ私の腕をつかんだままのエイトを振り切ってククールが向かった方向に私は思わず走り出した。遠くでかすかにエイトの私を呼ぶ声が聞こえたけど、振り返る気はなかった。



 ククールは案外簡単に見つかった。

 大きな木のふもとで、その木にもたれかかり、肩で呼吸をしながら胃の中のものを吐き出しているようだった。

 そんなククールの背中はいつものぞんざいな態度とは裏腹に、とても小さくて今にも消え去ってしまいそうだった。



 ホントだった。エイトがうそをつくわけはないけど、信じたくなかった。

 だってククールは命削ってるってことよね。みんなの傷を治すために・・・

 あいつは自分を大切にしていない。ううん違う。自分のことをどうでもいいと思っているふしがあることは気づいている。

 でも、そんなのひどいじゃない。あいつは生きなきゃいけない義務も生きる権利もあるんだから。

 ククールがいつも不健康そうな青白い顔をしてるのは、もしかしたらこういう影響なのだろうか?





 不意に私の頬を涙が伝う。

 そんなククールが悲しかった。それ以前にそんなククールを理解してあげられなかった自分が情けない。回復してあげる方法が無い自分が悔しくて悔しくて仕方がない。



 ふと以前にポルトリンクのスキルに詳しいお姉さんに聞いたことを思い出した。お色気のスキルを極めたときに、仲間全員を回復できる特技が使えるようになると・・・

 今度からは、スキルポイントを手に入れたときはお色気に振り分けよう。強力な攻撃呪文は一生懸命勉強すれば覚えることも出来る。



 エイトにだけこっそりと私の考えを伝えると、満足そうにゆっくり頷いてくれた。

 違う意味でククールが喜びそうだ・・・ってエイトがポツリとつぶやいたのは気にしないでおこう。




++あとがき++
初めはギャグだったんだけどな・・・この話(^^ゞいつのまにかシリアスになってるよ。いつの間にかって言うか・・・4行目書いたときにすでにシリアスに変更決定だったんですけど(笑)
ちなみに言うと、1行目2行目にギャグだったときのなごりが・・・
いやなにって・・・私はゲーム的要素(というのか?)なレベルアップとかポイントってのはシリアスでは使いにくいんですよ・・・
つまりが「スキルポイントを振り分ける」という表現がギャグの名残ってことですね(笑)

で、前にも一度小説内で使ったことあるんですが・・・
「回復魔法は疲れる」っての・・・私だけかもしれないけどそんな気がしてるんですよ。
過去作品の僧侶系のキャラってみんなはかない感じのするキャラ多くないですか?2のサマルトリアの王子とか4のクリフとミネア、6のミレーユも・・・
だから命削ってみんなのために・・・って、妄想(?)が(^^ゞ


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