「賑やかだね」
 城の内外、ようするに国中がお祭りムード一色でこの賑やかさは夜半を過ぎた現在でも終わりそうな気配は全く感じない。
 誰が主役であるのかもうすでに全員が忘れているのではなかろうか。
 そんなふうに考えて苦笑いを浮かべた主役の片割れだったはずのエイトに、もう一人の主役のミーティアは楽しそうに声をかける。
 「みなさん、エイトとミーティアをに気を使ってくださってるんですね。でもみなさんが楽しそうで何よりです。」
 気を使うって分かってるのだろうか。この姫様は・・・などと心の中で悪態をつきそうになるエイトである。





 世界二番目の大国トロデーンにて王の愛娘ミーティア姫と近衛隊長でサザンビーク王家の血を引くエイトの結婚式。
 世界中から著名人を招き執り行われた。
 サザンビークからはグラビウス王に加え跡継ぎであるチャゴス王子、アスカンタからもパヴァン王が直々に訪れ、サヴェッラ大聖堂のニノ司教、バトルロードを治めるモリー、メダル王女、ラパンハウスからも当主のラパンが、ベルガラックを治めるフォーグとユッケも揃って駆けつけ、トロデーン地方有数の村であるリーザスからは当主であるアローザに加え時期当主ゼシカとその婚約者であるククール、世界一有名な女盗賊であるゲルダと夫ヤンガス。世界一有名な占い師ルイネロまで嬉々として招待を受け入れた。
 それだけにとどまらず、おとぎ話や伝説に詠われる月の世界の住人ことイシュマウリに、三角谷のラジュ、竜神族の長である竜神王までいる始末である。

 いくら王族の結婚式とは言え遠き国の主たちは常ならば国を長期間空けることはままならず使者をたてるのが一般的である。
 仮に当人が出席したとしても跡継ぎなどの信頼の置けるものを国に残すのが普通で、国王と王子が揃って出席するサザンビークや、2人の当主が同時出席するベルガラック、当主と次期当主が出席するリーザスなどは異例中の異例である。
 それもこれも全てが近衛隊長エイトの人柄。諸事情で世界中を旅していた彼は各地で人助けを行っていたからだ。もっとも当人は人助けと言う認識が非常に薄く、旅の間に出会った人々が幸せであればそれが一番嬉しいとのことなのだが。
 つまりが今回の出席者一同は揃いも揃って彼には恩義があり、誰がなんと言おうと自ら出席すると言い張っていたのであった。
 一部、行きたくないと駄々をこねたものの父親に首に縄つけられるがごとく引っ張ってこられた小太りな王子もいることはいるのであるが。

 後にも先にこれほどまでの格式のある人物を大勢招いた式は始めてであった。
 しかし、式が終わった途端に厳格な公人が揃っているにもかかわらず、堅苦しい雰囲気はまるでなく、ドンチャン騒ぎの大宴会と化していた。
 パヴァン王はイシュマウリに再び会えたことも心から嬉しいようで、しきりに礼を言っている。パヴァン王はエイトとイシュマウリに救われた過去を持つ。
 竜神王は人間を軽じて見ていたがためにグラビウス王に兄を失わせてしまった非礼を詫びている。外界との繋がりを完全に絶っていた誇り高き民であるはずの竜神族と人間がこうして接点を持てる機会が訪れただけでも大いなる進歩で。
 世界的に一二を争う娯楽であるバトルロードとベルガラックのカジノはそれぞれの当主が意気投合したらしく、先ほどから談笑を繰り返し同盟でも結びそうな勢いである。
 ルイネロは城下の若者達に囲まれて、めでたい日ということで特別に無料で占いをしている。



 身分も大陸も、そして種族すら超えて酒を酌み交わしている中庭の様子を眺めながら平和だなとほのぼの思うエイトの手の中には黄金色の羽がある。
 つい先ほど、中庭で見つけたものだ。きらきら輝くそれには見覚えがある。あの旅の仲間には忘れることのできないもの。
 神鳥レティスまでもが自分達を祝福してくれているのだろう。なんと感慨深い話なのだろうか、これほどまでに幸福で良いのだろうかとすら思う。







 それにしても、まだまだ続きそうなお祭り気配の中、主役であるはずのエイトとミーティアだけ先に部屋に戻された。
 「主役はお疲れだろうから先に休めよ」となんとも殊勝なことを言いつつ眼が笑っていたククールと、「孫は多ければ多いほうがいいのぉ」などと直接的な言い回しだったトロデ王を思い出してエイトは苦笑いだ。
 ゼシカと談笑しているミーティアが聞いていないのを言いことに二人そろって言いたい放題で、ククールはともかくトロデに言われては逆らうことなど出来るはずもなく、昨日まではミーティアの部屋、本日からはエイトとミーティアの部屋となる自室に戻ってきて、今にいたる。

 純粋無垢で天然な彼女がそういう行為を知っているのか甚だ疑問な所である。しかも行為の経験ではなく机上の知識での話だ。
 エイト自身もトロデーンが茨に覆われる前に数人の女性から告白されたことはあったが、密かにミーティア一筋であった彼は全て丁重にお断りしていた。
 数年前までは信頼の置ける仲間達ククールやゼシカ、ヤンガスにだって言えなかった真の想いも今では隠す必要もない。
 もっとも隠しているつもりだったのは本人だけでトロデ王含めて仲間達全員が知るところではあったのだが。
 つまりがそういうわけで、彼にも行為の知識はあっても実際の経験はない。
 それを全て察していたククールなどは、数日前からトロデーンにやってきてエイトにとって顔から火が出るのではないかと思われるような話、ムードの作り方から行為自体のやり方までせつせつと語っていたのだ。

 無論、エイトとて男である。今まで一度も欲情しなかったかと問われれば否である。
 むしろミーティアの婚約者と呼ばれる立場となってからは、欲情と戦いまくりであった。
 だから、ククールやトロデ王が色々と世話を焼いてくれること自体は、とてもとても嬉しい。
 だが、だからと言ってその行為まで持って行くすべが分からない。ククールに女性の誘い方は聞いた、教えてもらってはいた。しかしそれはククールが今まで相手にしていた女性への言葉であって、絶対にミーティアには伝わってくれないと確信している。
 冷静沈着でめったなことでは表情を崩さないエイトもさすがに頭を抱えるのであった。





 「あのね、ミーティアはこの前メイドさんにエイトのベットを用意してくださいとお願いしたんですが、『2人で寝ればよろしいのですよ』と聞いてくれなかったの。だから悪いけれどミーティアのベットで寝てね。広いベットなので狭くはないと思うんですけどごめんなさい」
 常ならぬ彼の様子を不思議そうに眺めながらミーティアは口を開いた。
 大変申し訳なさそうに語る彼女に、益々持って頭を抱え「オレは別に構わないよ」とそれしか言えないエイトである。





 「そう。そう言ってくれてよかった。」
 なんの邪気も悪気もないミーティア笑顔での言葉にかわいいと思う反面、ため息をつきたい気分に陥ってしまう。そんな世間知らずの天然ぶりも好いているというのに贅沢な悩みと言うものかもしれない。
 「早く休んで疲れを癒してほしいと皆さんがせっかく気を使ってくれたんだもの、そのお気持ちに答えましょうか」
 何を言うかこの姫は。皆が気を使ってくれたのは事実だが、早く休んでではなくて夜遅くまで楽しめという意味で気を使ったはずだ。
 しかしこの数ヶ月、式の準備のためメイドたちに着せ替え人形よろしく状態だった上、公務もしっかりこなしていた彼女に疲労の色が見え隠れすることもエイトは気づいていた。
 まだ先は長い。これからずっと一緒にいられるのだし、今日はゆっくり眠らせてあげよう。そう思いながらも苦笑いしミーティアの待つベットに向かう。



 「エイト。ミーティアはとても幸せ者です。エイトと一緒に寝れば素敵な夢が見れそうな気がします。」
 「オレもだよ。おやすみミーティア」





 結局、ミーティアがエイトが望む、廻りの者達が期待する跡継ぎを儲けるための行為を理解するのはさらに数ヶ月経った頃のことであったとかなかったとか―――









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 まず初めに10万HITありがとうございましたm(_ _)m
 記念すべき10万という数字で、皆様には本当に感謝いたします。感謝の気持ちとめでたいなと思う心から、記念小説はほのぼのにしたいとずっと思っていました。実を言うとカウンタが9万を越えた辺りから思っていたことです。
 私にとってほのぼので行くには主姫!!!
 今でこそ他ジャンルに押されすっかり更新が鈍ってしまったドラクエ8ですが、当サイトはドラクエ8主姫とそれを期待(?)してくださった方々に成長させていただいたと思っておりますので、久しぶりに主姫登場と相成りました。

 しかしね・・・出来上がってみればほのぼの通り過ぎてばかばかしい話になっているような・・・(T_T)
 久々すぎて勘が戻らなかったのもあるんですが、皆様に捧げるつもりで書き始めた割にはなんかつたない話で申し訳ないです。
 それでも手っ取り早く言うと今回はミーティアの天然の世間知らずぶりを書きたかっただけとも言うので、それに関してはそれなりに自分自身満足はしています。
 箱入りで育っているミーティアにはそういう行為を教えてくれる人も、興味を抱かせる出来事もなかったのではないか?と考えていたりします(笑)

 と言うことで!!!本当に感謝!感謝!の10万HITです。
 つたないながら・・・この小説はフリー小説とさせていただきます。万一気に入ってくださる方がいればご自由にどうぞです♪




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