「やぁククール。元気だった?」
 「なんでお前はそんな緊張感ってもんがねぇかな」
 世界2番目の大国トロデーンの国王エイトに悪態をつける人物は今やそう多くは無い。
 世界を救った仲間であったククールはその少ない人物の一人である。

 「君の口から緊張なんて言葉が聞けるとは、それだけでも今日来た甲斐があったってもんだよ。」
 エイトはけたけたと腹を抱えて笑っている。
 それもそのはずで、普段のククールは人をなめたところがあり緊張などとは無縁の生活をしているのだから。
 あの旅の間、モンスターとの戦闘中だって「魅惑のまなざし」だとか、ふざけたカリスマぶりだったのだから―――



 ここはトロデーン領土であるリーザス村のアルバート家の一室だ。
 エイトとその妻ミーティアはあまりの飾り付けぶりに村に入ったとたんに目を見開いて驚いた。
 この村に始めて訪れたときは当時の次期当主の不幸により、喪に服しており、あの当時を思い出すとここまで立ち直ることが出来たことを素直に喜ばずに入られなかった。
 今日のリーザスはアルバート家の次期当主の結婚式の準備のため、さまざまな形で盛り上がっている。中には式を待ちきれずに飲み始めている者もいるようだった。

 リーザスの次期当主ことククールとゼシカの結婚の話が決まったのは数ヶ月前。
 それからと言うものエイトはこの日が来るのを待ちわびていた。
 互いが明らかに想いを寄せあっているというのに素直じゃない二人であるので、式までの間にケンカなどしないでくれよ。と気を揉んでいたというほうが正しいのであるが。



 それにしても―――
 今のククールは見慣れぬ白の礼服姿。そして「緊張」していると言うのだ。これが端から見ていて面白くないはずが無い。
 まだ笑っているエイトにククールは何がそんなに面白いのかと拗ね始める。
 「とにかく、この日が無事に来て良かったよ。おめでとう。式も楽しみにしてるよ。」
 さすがにこれ以上笑っていると本気でククールの機嫌を損ねかねないと悟ったエイトは社交辞令のような本音でもある祝いの言葉を口にする。
 途端に照れて「あぁ」だの「う〜」だの言うククールもめったに見れるものじゃない。
 また密かに笑いがこみ上げてくるのを喉の奥でエイトは必死な思いで耐えた。



 「ホントに俺がこんなところにいていいのかね」
 ポツリとつぶやくククールにエイトは驚く。今更何を言う出すのかこの友は。良いに決まってる。
 「君以外でどこにふさわしい人物がいるのさ?」ものすごく呆れた口調でエイトは返した。
 マリッジブルーなんて言葉が良く女性に使われるけれど、男にもそういうことがあるんだとエイトは始めて知るのだった。







 「ゼシカさん綺麗です」
 エイトとククールが深刻なような呆れているかのような話をしている頃、同じ屋敷の別室では真っ白なウェディングドレスに身を包んだゼシカにミーティアが感嘆の声を上げていた。
 「ミーティア姫にそう言ってもらえると照れるわね。・・・ってもう姫じゃないんだっけ」
 「そんな細かいことはどうでもいいのですよ」
 ペロリと舌を出しながらのゼシカの最後の訂正にトロデーンのミーティア王妃は笑う。
 そう。どうでもいいのだ。そんな細かいこと。今日と言う喜ばしい出来事に比べれば。
 「結婚してもミーティア王妃は何も変わらないのね。結婚したって言ってもそう簡単に変わるものじゃないのね」
 「結婚はゴールじゃなくてスタートだとエイトが言ってたの。ミーティアもそう思います。」
 ゼシカの少し不思議そうな表情を見てミーティアは言葉を続けた。
 「これから何十年も共にいていいと神にお許しをもらう儀式です。ミーティアは式よりもその何十年も共にいられる日々を楽しみたいのです。」
 もちろん結婚式と言うけじめを。仲の良い人にお祝いしていただけるもの嬉しかったですけれど。ミーティアはにっこりと極上の笑みを浮かべた。



 「そっか。そうよね。」
 ミーティアの言わんとしていることを正しく理解したのだろうゼシカは、かみ締めるように彼女の言葉を反復した。
 「嫌なこともたくさん今まであったけど、何十年も一緒に居られる許しをもらえる人と出会えたことは幸せなことよね。」
 まだ穏やかに笑みを浮かべているミーティアにつられゼシカも笑った。







 「お待ちかねの新郎新婦の入場です」
 リーザスの教会に集まった招待客は、そんな司会者の言葉に一斉に扉のほうを向く。
 ゆっくりと開かれる扉の向こう。逆光に反射してその表情までは伺えないものの真っ白な衣装に身を包む二人の影が映る。
 拍手拍手の大合唱。エイトとミーティアの二人も力の限りの拍手で迎える。
 近づくにつれ明らかになる二人の表情としぐさ。
 いつものツインテールの赤い髪は一つにまとめられアップにしているせいなのか、やけに大人っぽく感じるゼシカ。
 まるで手と足が同時に出ているのではないか?と疑いたくなるほど「緊張してます!」と全身が語っているようなククール。
 細いゼシカの腕はしっかりとククールの腕にからまさり、歩きながらたまに互いを見詰め合っている二人からは幸せです。と言うオーラに満ち溢れている。





 「病める時も健やかな時も共にあることを誓いますか?」
 「今まで、病める時も健やかな時も共にいたの。これからもそれは一生変わりないわ。」
 結婚式お決まりの誓いの言葉にゼシカは自分なりの言葉でしっかりと答えた。
 そんなゼシカらしい言葉に会場のあちらこちらから喝采があがる。





 誓いの口付けをする二人を眺めながらエイトは、この二人の永遠の幸せを確信したのだった―――









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 ドラクエ8祭り開催記念(?)リク受け付けます!と言う日記を書いたところ一番最初に頂いたリクエストがククゼシ結婚式でした。
 お名前は分かりませんが、リクしていただけた方、本当にありがとうございましたm(_ _)m

 私は当然(?)結婚したことがありませんので、新郎新婦の気持ちなんてわかんないんですけど(^^ゞ
 だから突っ込みどころはあるかもしれませんが・・・と言っても突っ込まれても分からない恐れもありますが(苦笑)
 と言うことで、ククゼシ結婚式と言いつつ密かにお友達(主姫)視点が多くなってしまったところはどうかご勘弁を!
 さすがにこの年にもなると友人の結婚式に招待されたことは数度ありますので、そっちの気持ちは分かります(笑)

 と言う感じなんですが(どういう感じだ)相変らず(?)ククールがヘタレですね(笑)
 なんでも飄々とやってしまうククールもゼシカのことになるとヘタレになると言うのが当サイトのククールです(笑)
 いつのまにか、そうなってしまったのだ(^^ゞ





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