「エイト!ミーティア!」
 ドタバタと自分達の名を叫びながら廊下を走っているようなトロデの声に部屋の中で2人は顔を見合わせ盛大なため息をついた。



 エイトとミーティアが婚礼を挙げた、その後すぐにトロデはエイトに国王の座を譲り隠居した。
 王族として経験が浅いため、影ではトロデが何かにつけてアドバイスを送っていたとは言え、隠居した途端にまるで子供のようにはしゃいでいることが増えた。元来の性格に加え、愛娘が愛した男、トロデにとっても息子のようにかわいがってきた男と結ばれたことへの喜びが大きかったのかもしれない。
 そして、それは数年たった現在も一向に変わらない。





 まだ、エイトが近衛隊長であった時分に彼が取り仕切り始まったハロウィンのお祭りまであと数週間に迫っていた。
 トロデーンの民は基本的に明るく、お祭り大好きで民のほとんどが楽しみにしているハロウィン。
 しかし、一番張り切っているのは前国王のトロデであることは間違いがない。
 政治のことなどは既にエイトが一人で執り行っているのもの、お祭りの類になると必ずと言っていいほどトロデの出番なのである。
 年の割りにとてもお茶目なトロデのほうが良い案を出すことや、エイトは外交などで大変忙しいことを考えると、そんなトロデの張り切りぶりはエイトにとっては大変大助かりで、トロデーンの民にとっても嬉しいことであった。





 そんなトロデが大変微笑ましいながらも、大声を上げながら廊下を走るのはあまりいただけた行為ではなく。
 国王エイトとミーティア王妃は冒頭のようなため息と相成ったわけだ。
 それでも年に一度のこのお祭りをトロデがどれほど力を入れているかが、痛いほど分かっているだけに苦笑いをしながらも扉を開けてトロデを迎えるためにエイトは立ち上がった。




 「おぉ〜エイト。出迎えご苦労。どうじゃ?ワシの恰好は!」




 「・・・お義父上」
 エイトはその一言のみで絶句。まさに絶句。
 頭の回転が速く、何事においても臨機応変に対応することが出来るトロデーン自慢の優秀な国王もさすがに言葉も発せない。
 そんなエイトの常ならぬ様子にミーティア王妃は疑問符を浮かべながら、彼らの元へ歩み寄り、父の姿を目にするとやはり絶句するしかなかった。




 トロデの姿は緑色。
 数年前、このトロデーンが呪いに犯されたときに、何度も憎憎しいとトロデが語っていた例の魔物の姿。
 なぜ、いまさら再びこのような恰好になってしまったのか。
 再び頭を回転させることに成功したエイトは、今度は真っ青になって慌てふためいた。

 「驚いたか?」
 にっこりといかにも楽しげに問いかけてきたトロデに、エイトは心配することではないことをようやく悟るが、心臓に悪いことには違いない。
 あの忌々しき呪いは、忘れてはいけないことで後世まで語り継いでいこうとは思うが、好んで思い出したい出来事でもない。

 「今年のハロウィンはどのような変装をしようか考えておったらのぉ、竜神王殿が訪ねてこられて、魔法で姿を変えてもらったのじゃ。よく出来ておるじゃろ?」
 まるでスキップでも刻みそうなほどのトロデの喜び方に、エイトは時が経ったことを思い知る。自分が魔物の姿となっていたことを、憎々しく、疎んでいたはずの当時にすれば考えられないことなのだ。
 それなのに今ではこの喜びよう。
 そもそも、毎年このお祭りが近づく度にトロデは自分が魔物の姿になっていたことがあることを、少しばかり自慢げに話す。なんでもかんでもプラス思考のトロデらしきところであるのだが・・・
 それ以前に、いつのまに竜神王と仲良くなったのだろうか。まるで茶飲み友達かのような。



 「ではワシは、まだまだ準備があるのでこれで行くぞ。」
 エイトとミーティアの反応にさらにさらにご機嫌になったトロデはそう一言の残して、部屋を後にしていった。






 「それにしてもお父様ったら、わざわざ竜神王様のお力を借りなくたって、お顔を緑色にペイントなさればよろしかったのに」
 「ミーティア、それを言っちゃおしまいだよ」
 さらりと言ってしまうミーティアに、少しばかり注意らしき言葉をかけるエイトだが、魔物でも人間でもあまり変わらないんだよな・・・と内心では呟いていた。





 今年もトロデーンのハロウィンはとっても楽しいものになりそうな予感。









++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 これ本当は、拍手お礼SSSとして書き始めました。
 が!!!書いているうちに予想以上に長くなり始め、最終的には拍手御礼にしては長すぎの領域に達しました(笑)
 ギャグとシリアスの微妙な兼ね合いなんですが・・・、とにかくトロデ王が書きたかった!!!
 この話では既に王様じゃないんですけどね(笑)
 私はトロデ王が大好きで大好きで、主姫SS書くたびにトロデは毎回確実に登場していたのですが、意外にも(?)初めてのトロデ王メイン話でした(笑)

 昨年のハロウィンにアップした、「楽しいお化け城」の設定を踏まえています。と言うか、「楽しいお化け城」の数年後と言うことです。
 トロデだったら、こんな感じで張り切ってくれればいいな♪と、そして、何事にもプラス思考で、あの忌々しきのろいも数年も経ってしまえば笑い話にすら出来てしまう!なんて超プラス思考のトロデがいればいいな〜♪と思う。

 ところで・・・最近イベント時にしかドラクエ8更新してないね、私・・・ごめんです・・・これからはなるべく頑張る!(なるべくだけどね)




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