「エイト何をしてるの?」
 大きなカボチャのようなものに一心不乱に目や鼻を描いているエイトを後ろからずっと眺めていたミーティアはついに声をかけた。
 近衛隊長として休む暇もなく働いているエイトだというのに、まるで子供が遊んでいるかのような行動が不思議で不思議で仕方がなかった。
 「あれ?ミーティア。いつからいたの?気づかなかった。」
 大分前から眺めていたのだが、とても真剣だったがために気配に全然気づいていなかったのだと知ってミーティアは苦笑いを浮かべた。



 「実はね。ククールに前に聞いたんだけど、みんながお化けの格好をして楽しむお祭りがドニにはあるんだって。面白そうだからトロデーンでもやれないかな?と思って陛下に相談したら事の外、喜ばれてオレが準備を一任されたんだよ」
 そのときの事を思い出したのか苦笑い交じりのエイトに、賑やかなことやお祭りが大好きな父王の喜びそうなことだとミーティアも苦笑いをする。
 「お化けさんになるの?ミーティアもお化けさんになっていいのかしら???」
 さすが親子、トロデに負けないくらいに一気に瞳がキラキラし始めたミーティアにエイトは「うん。良いと思うよ」と頷いた。
 「城全体の飾りつけは兵達でやって他の人たちは自分の仮装と色々頑張ってもらうつもりなんだ。」
 エイト自身も他人のことをとやかく言う立場にはなく、とても楽しみにしているのであった。



 「皆、楽しそうじゃのう」
 どんどんお化けの飾り付けをされていく城を眺めながらトロデ王は呟いている。
 そういうトロデ自身が一番楽しそうに見える、と隣で聞いていたエイトは笑いがこみ上げるを必死で耐える。
 エイトがククールから聞いたお化けの格好をして楽しむ祭りの日は、偶然にもトロデーンが数年前に忌まわしき呪いにかかったその日であった。
 あの出来事はトロデーン史上最悪の事であったが、幸いなことに今は城の復興も終わり皆が楽しく平和に暮らしている。
 しかし、あの事件を風化させずに平和に感謝するお祭りとして今回のイベントはまさに恰好のものであった。
 「陛下も色々仮装を考えてらっしゃるそうですね。楽しみにしております。」










 祭り当日、城の内外がお化けモードで誰一人としてまともな恰好をしているものはいない。
 多少のメイクや服装でお祭りに参加しているものの、何かあったときのために警備の最高責任者として完全に仮装するわけにも行かなかったエイトは人物を特定できる唯一の人間のようなものだ。
 すれ違う人(お化け)に挨拶される。
 ドラキュラよろしく状態に全身真っ黒な者もいれば、逆に何のまねなのか真っ白いシーツのようなものを全身にかぶった幽霊の恰好の者、あげく火の玉でもイメージしたのか全身に小さなメラのような火をまとわせている者。
 正直モンスターどもより怖いと思う。
 それでも道行く人たちの声が弾んでいるような感じがするのは決して気のせいなわけではないだろう。





 「だ〜れだ?」
 楽しげなものたちを微笑ましい気分で眺めていたエイトは後ろから目を隠され問われた。
 回されている手を優しく解きながらエイトは苦笑だ。
 自分にこんなことするのはミーティアしかいないのだ。誰だ?もなにもあったものじゃない。
 しかしエイトは振り返ってギョッとする。それもそのはずで、ミーティアは原型すらとどめていないような仮装振りであった。
 いつもはおしとやかに笑うその口にはキバがあり、さらさらストレートの黒髪は真っ赤に染められアップにしてある。あげく角までついているのだ。
 いつもの曲線で描かれている眉はキリッとまっすぐに伸びている。
 長めなスカートはなんとしたことか超ミニスカートで真っ白ですらっとした太ももが丸見えだ。
 それらの仮装ぶりに舌を巻くと同時にゼシカ顔負けの露出振りには照れてしまう。
 「・・・・・すごいね」
 思わず呆けたようにつぶやくエイトにミーティアは気分を良くしたのか満面の笑みで答える。しかし、その笑みすら今は怖い。
 「ねぇ、エイトも少しくらい遊びましょうよ。今は平和なのですから。」
 恰好は普段と違っていても根本はなに一つ変わらないミーティアのおっとりと微笑みながらの問いかけにはエイトは逆らえないのであった。



 二人は並んで歩く。いつもとは違う雰囲気の城の中。繋がれた手は言葉はなくても幸せを感じる。
 未来のことは分からない。しかし過去のあの忌まわしい事件は忘れない。
 あの事件を忘れないためのお祭り。それでもあの事件を笑って話せるようになった自分を始め城の者の逞しさを誇りに思わずに入られなかった。
 あの事件、そしてそれに続く旅は、嫌なこと辛いことも多かったが決して嫌なことばかりでもなかったと今は思える。
 なにより旅を通じて知り合った人たち、とくに仲間達、ヤンガス、ゼシカ、ククールと出会えたことは至極嬉しいことだ。

 「エイト、あのときのこと思い出してるんでしょう?ミーティアもよ。」
 ミーティアは「あのとき」と称しただけであったが、その「あのとき」が何を指しているかはエイトにはわざわざ言われなくたって手に取るように分かる。
 まさしく「あのとき」のことを考えていたのだから。本当にミーティアには敵わないとエイトは舌を巻く。
 今の仮装した城はあの時・・・あの旅の途中で一度だけ立ち寄ったときの城を髣髴させるほどのおどろどろしたものを感じる。
 あの時と違うのは皆の楽しそうに響く声だけ・・・。そうたった一つの違い。でもそれが最高の至福な証拠。





 問いに答える代わりにエイトはさっとミーティアの唇を奪った。
 ミーティアの口に生えているキバが当たって少し痛かったけれど、そんなことは気にも留めなかった。
 「ねぇミーティア。このお祭り毎年毎年やろうね。オレらがおじいちゃんやおばあちゃんになっても続けていこうね。」



 ―――過去も未来も君がいればオレは幸せだから―――





 ドニ発祥のこのお祭りは後にハロウィンと呼ばれ全世界共通のイベントとなるわけだが、それはまだまだ先の話―――










++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 どうも〜♪みなさまお久しぶりです!なんと1ヵ月半ぶりのドラクエ8の更新でした(笑)
 そしてドラクエ8祭(10月31日〜12月12日)の第一弾更新です(笑)

 ハロウィン大好き結さんのハロウィン話。
 なぜかハロウィンの発祥は都合以上ドニにさせていただきました(笑)
 そして、その後全世界に広まります(笑)
 うんが・・・考えてみれば怖いよな・・・ミーティアのキバ(笑)
 って言うか・・・ドラキュラに幽霊に火の玉・・・明らかにハロウィンではないですな・・・(^^ゞ
 そこはパラレルと言うことでご勘弁(笑)

 これフリーとします。バレンタインに続いて2度目のフリーもの企画です。
 正直自分としてはフリーにするには完成度が低すぎると思ってはいるんですけど。。。でもハロウィンの話が私の頭の中に閃いた時点からフリーにする気満々だったので・・・恐れ多いながらも(^^ゞ
 全文のお持ち帰りも一部抜粋してのお持ち帰りも自由です。イラストサイトでハロウィン絵描かれた方が一部抜粋で挿絵ならぬ挿文なんかに利用してくださるのも歓迎〜(笑)
 ご報告は特に必要はありませんが、サイトに公開する場合だけ、できれば教えてくださると嬉しいです。
 その後は煮るなり焼くなりお好きにどうぞ(笑)





小説目次へ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送