「やった〜〜〜。やったでがす」
 レティスの背の上でヤンガスが叫ぶ。
 それもそのはず、エイトたち4人はついに暗黒神ラプソーンを倒し、世界に平和を取り戻した。



 「今か今かと待ちわびておったぞ。よくぞラプソーンを倒した。さすがは我が家臣たちじゃ。」
 トロデ王はまだ魔物の姿のままではあったが、浮かれきっている。
 「光栄の極みでございます。」応じるエイトも満面の笑みである。
 ヤンガス、ゼシカ、ククールの3人はトロデ王の家臣になった覚えはないなどと悪態はついているものの、トロデ王やエイトと同じで満面の笑みである。
 「この世界は平和となりました。この城の呪いもまもなくとけるでしょう。」今まで何度も窮地を救ってくれた神鳥レティスはそう言って去っていく。



 ―――そして―――
 「おっさんが光り輝いてるでがす。」というヤンガスの言葉に皆振り向けばトロデ王の呪いがとけたらしい。
 「・・・・・魔物のときとたいして変わらないでガスな・・・・・」
 その言葉を不服としたトロデ王とヤンガスが言い合いを始める。エイトはその2人のそんな光景をじっと眺めながら幸せだと感じていた。
 「姫。今まで本当にありがとうございました。重たい荷物を運んでいただいて恐れ多くございました。」
 「いいのよ。エイト。あなたの役に立てた事がミーティアにとってはとても嬉しかったのです。呪いをといてくれて本当にありがとう」
 そんなエイトとミーティアのやり取りに言い合いをしていたトロデ王とヤンガスも涙ながらに近寄ってくる。
 エイトは思う。陛下とヤンガスはなんだかんだと仲が良いな。初めはヤンガスの陛下に対する言葉遣いがハラハラしたものだが、今となってはそれが良かったのかもしれない。





 「宴じゃ。料理長、早速で悪いがありったけのご馳走を作るのじゃ。。皆の衆宴じゃ。今日はトコトン楽しむのじゃぞ。」
 こんなトロデ王の威勢のいいセリフで宴は始まった。
 一番人気は当然エイトである。兵や小間使い町の人と老若男女問わずにひっきりなしに酒を注ぎに来る。もちろん他の3人の周りにも人だかりが出来ていたがトロデーンで育った身近なエイトにはかなうはずもなかった。



 「エイトはどこに行ったのかしら?」ミーティアの周りにも人が多くて宴が始まって以来エイトと一言も喋ってない事に気付き、探しはじめる。
 どこに行ったのかと自分で口にしながらもミーティアには心当たりがあった。図書室の裏の陰になっている場所がエイトは昔からお気に入りだった。
 小さな頃、勉強が嫌で嫌で仕方なくてエイトに駄々をこねたときに隠れて連れてきてもらっていた。そこは調度、死角となっていて、そう簡単には見つからないのである。
 「少しの間だけだよ。ミーティア。」そう言って笑うエイトが好きだった。だからいつも少しの間だけ連れてきてもらっていたのだ。
 エイトは兵となってからもたまに来ていた。エイトのお気に入りの場をミーティアは何度も何度もテラスから眺めているから知っている。
 物陰に隠れていて死角になっているとは言え、実は2階のテラスからかすかに覗く事が出来るのだ。その事に気付いたときからテラスがミーティアのお気に入りの場所となったのである。

 そんな昔の事をを思い出しながらその場所に着いた。
 確かにそこにエイトはいた。しかし旅の疲れか、久しぶりに飲んだ酒の影響か壁にもたれかかって熟睡している。
 旅の間だったら、少しの物音や人の気配で人一倍敏感に目覚めていたエイトであったが、今は心から安らいでいるのだろう。ミーティアの気配にも気付かない。
 「疲れているわよね。本当にありがとう。」
 ラプソーン戦の直後の宴会のため、衣服はボロボロでみすぼらしい事この上ない。しかしミーティアには誰よりも光輝いて見える。
 こんな人を友達に持った事を、こんな人を愛する事が出来た事を誇りに思う。
 大事な友達で、いつも一緒にいたかった。その気持ちを恋と悟ったのは旅の最中である。かなわぬ恋でその事を知ったときには絶望的な気分だったが、今は素直に想いを口にしたいと思った。
 「エイト。好きよ。愛しています。」
 そう言うと眠るエイトの額に軽くキスをし、隣に腰掛ける。
 「エイトは今どんな夢を見ているの?ミーティアも混ぜてほしいな。」





 宴は佳境に入り騒ぎ疲れた者達が、そこかしこで高いびきである。
 「いや〜こんなうまいご馳走は初めてでガス。」
 「そうね。なんの心配もせずに食事をするのがこんなに幸せだとは想わなかったわ。」
 「酒はうまいし、かわいこちゃんもいるし最高の気分だな」
 ラプソーンを倒した英雄達は結構のんきな会話をしていたが、ククールのかわいこちゃん発言にゼシカは睨みつける。そんなゼシカも今日くらいは多少の軽口も許す気分なのか睨みつけはしたものの口元は笑っている。
 「お〜い。お主らこんな所におったか。エイトはどこに行ったのじゃ?あやつに酒を注いでやらねば宴は終われぬ。」
 王が家臣に酒を注ぎたいなどの発言は大臣にでも聞かれようものなら苦虫つぶしたような顔になるであろうが、今は旅のメンバーしか聞いてなどいない。
 誰もがエイトに酒の一つも注いでやりたい気分なのだ。
 「それがさっきから見つからないでガス。アッシも兄貴と酒を酌み交わしたいでガス。」心底エイトを慕うヤンガスは珍しくトロデ王と全く同じ意見であった。
 「それにしてもエイトの奴、結構酒強いじゃねえか。いくら俺が気晴らしにでもと誘っても自分は飲めないから、なんて言ってたくせによ」ククールが悪態をつく。
 「あやつはかなり酒強いぞ。飲めないのではなく飲まなかっただけじゃろ。呪いが解かれるまでは娯楽の類は一切やらないつもりじゃったんだろうて。くそ真面目なやつじゃな。」
 そう言って、うんうんと頷くトロデ王の瞳はまるで父親のようであった。
 「じゃあみんなでエイト探しに行きましょうか?」
 ゼシカの言葉に皆、酔ってふらふらする足でエイトを探す。





 ―――夢みたいだ。またミーティアや陛下、城のみんなとトロデーンで会えるなんて。
 ―――夢なんかじゃないわ。エイト。あなたのおかげよ。あっ、でも今は夢の中で会話しているのよね。
 ―――ミーティア
 ―――今日はミーティアの事名前で呼んでくれるのね?嬉しい。
 ―――あっ。すいません姫・・・・・
 ―――謝らないでよ。夢の中でくらいミーティアって呼んでほしいわ。お友達でしょう?
 ―――そうだね。今日だけ子供の頃に戻った気分でいさせてくれる?ミーティア。
 ―――もちろんよ。エイト、ラプソーンを倒したご褒美はなにがいい?
 ―――そうだな〜?昔、2人でよく作った花の冠がほしいな。あれオレ好きだったんだ。
 ―――今でも好きでいてくれるの?エイトが嬉しそうな顔するから、よく練習していたのよ。
 ―――そうなの?ごめんね。
 ―――え〜?どうして謝るの?ミーティアとっても楽しかったのに。
 ―――ごめん。あっ、また謝っちゃった。ごめんじゃなくて、ありがとう。





 「いたでガス。いたでガスが」
 「うむ、ご苦労じゃったな。さすがは山賊の鼻じゃな。」
 「それを言うなら盗賊の鼻でガス。もっともアッシは元山賊でゲスが」
 トロデ王とヤンガスのいつも変わらぬ漫才めいたやり取りにククールとゼシカは笑いを堪えようともしない。
 「で、エイトの奴はどこにいるんだ?」
 ククールの質問にヤンガスは口ごもりながらトロデ王を見る。
 「なんじゃ。ワシの顔になんか付いておるのか?はよエイトのところに連れて行け。」
 ぴょんぴょん跳ねて全身で気持ちを表現するトロデ王は本当に魔物のときとたいした違いはないと、そこにいるだれもが思う。
 「わかったでがす。おっさんの兄貴への愛を信用するでゲス。」
 なんじゃそりゃとトロデ王、ククール、ゼシカの3人は顔を見合わせる。
 「あそこの陰にいるでガス」

 「あらら〜」ククールとゼシカが同時に間の抜けたような声を出す。
 そこには仲良さげにお互いにもたれかかって眠るエイトとミーティアの姿があった。
 「エイトぉ〜〜〜。ワシからの酒も飲まずに眠ってしまうとはひどいじゃないか」
 トロデ王はすっかり拗ねている。
 「おっさん。突っ込みどころはそこじゃないと思うでガス。」
 あきれたようにヤンガスがつぶやく。




 いいんじゃよ。ミーティアもエイトも幸せそうな顔をしておる。細かい事を気にするなと言うことじゃ。








++あとがきと言う名の言い訳・・・っていうか解説++

 はい、ED中の宴会でのお話です。勢いに任せて書いてしまいました。
 なんか前後の文が多少怪しいですが、ご勘弁を(^^ゞ
 実は私の個人設定では、エイトがミーティアを好きだと気付くのは旅立ち前。ミーティアは旅の途中サザンピークあたりと言う事になっています。
 
 で、今回何が書きたかったと言うと、エイトとミーティアの二人がお互いにもたれかかって幸せそうに眠るという事です(^^ゞ
 その割には話が脱線しまくってますが(苦笑)
 と言いますか、ミーティアが人間の姿に戻ったんだから、わざわざ夢で会話する必要はどこにあるのかさっぱりわかんないですが(笑)

 ってか、トロデ王。主姫のラブラブもたれかかり見て、本当に「細かい事気にするな」と言う人物なんだろうか?(笑)





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